ドイツの映画監督
本特集では、37年の生涯で40本以上もの作品を手がけたファスビンダーの監督作3本がラインナップされた。19世紀の作家テオドール・フォンターネの小説を原作として、社会の抑圧に違和感を抱きながら生きる若い女性の姿を描いた「
予告編には各作品の印象的なシーンとともに、社会が生み出したシステムに抗いながらも押しつぶされていく登場人物たちの姿が映し出される。本作を鑑賞した日本大学文理学部教授の渋谷哲也は、「今回のファスビンダー特集はまぎれもなく『暴力』がキーワードだ」「どの映画も愛する者たちの関係を非情に握りつぶす。だがそうなるのは運命でも必然でもない。その悲劇を容認してしまう社会の態度をファスビンダーは鋭く批判しつつ、微かに希望の光も同時に感じさせる」とコメントを寄せた。
特集上映「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選 2024」は、8月30日より東京・Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で順次行われる。
特集上映「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選 2024」予告編
渋谷哲也(日本大学文理学部教授 / ドイツ映画研究)コメント
今回のファスビンダー特集はまぎれもなく「暴力」がキーワードだ。今まで「自由の代償」として知られたゲイカップルの物語はセンチメンタルな道徳劇ではなく、妄執と策略の熾烈な闘争なのだ。それはあらゆるパートナー間で生起しうる搾取の関係性だとファスビンダーならいうだろう。「エフィ・ブリースト」は結婚という抑圧装置がもたらす諦念を描き出し、後に「マルタ」でグロテスクな悲喜劇へとデフォルメされた。そして「リリー・マルレーン」は決して結ばれることのないカップルの物語だ。彼らを隔てるのはナチスとユダヤ、ドイツとスイス、巡業歌手とサロン芸術家という絶望的な差異である。どの映画も愛する者たちの関係を非情に握りつぶす。だがそうなるのは運命でも必然でもない。その悲劇を容認してしまう社会の態度をファスビンダーは鋭く批判しつつ、微かに希望の光も同時に感じさせる。
マーメイドフィルム @eiganokuni
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選の予告解禁、ドイツ社会の抑圧を映した3本(コメントあり) https://t.co/eboQADPXWZ