映画「
大正初期の飛騨高山を舞台に、俳人・小説家の瀧井孝作による私小説「俳人仲間」の一編を映画化した本作。父親の事業が失敗し丁稚奉公に出された孝作が2人の女性と出会い、別れという現実に直面しながら深い悲しみと葛藤に包まれる姿が描かれる。俳句をよりどころとする孝作を高橋が演じ、西洋料理屋の女中・玉に芋生、三味線芸者・鶴昇に三輪が扮した。
小平は製作のきっかけが岐阜県高山市からの依頼だったことに触れ「1週間現地に泊まり込んで、何を撮りたいかを調べ尽くしたことで原作と出会いました。瀧井孝作が青年期を振り返り、肌に当たる夜風のやわらかさや月の満ち欠け、恋した人の着物の色までつぶさに記録してあって『なぜこの人は忘れずに書けるのだろう』と思ったことが始まりでした」と語る。
脚本を読んだときのことを回想する高橋は「一瞬で作品の世界に引きずり込まれた感覚でした。登場人物がイキイキしていて、表情や心の内が鮮明に浮かんできた。脚本として、文章として美しかったんです」と回想する。演じるにあたって「この脚本を超えるのが絶対条件。瀧井さんたちの手の届かないところになんとかたどり着きたいと、勝負に行くような気持ちでしたね」と熱弁。そして直後に「どうでしょうか……?」と周囲を見回すと小平らから「バッチリです!」と反応されていた。
芋生は「玉はずっと笑顔で明るい生命力にあふれているけど、心に抱えているものを人に見せない」と言及。「監督に『どこまで見せていくのか』の塩梅を相談し、高山でリハを1週間みっちりしたことで玉を見つけることができました。皆さんのグルーヴが合っていて、一致団結して作り上げた気持ちです」と笑顔を見せた。
三輪は劇中で自身の特技でもある三味線を披露していると明かし「鶴昇は自分が知らない苦しさを背負っていたので、脚本を読んだ当初ではわからない部分が多かった。でも一番寄り添わなければいけないのは自分だし、鶴昇を愛さなければと。そう考えていたら、彼女が心を開いて自分の中に入ってくれた。高山の景色が鶴昇の見ている景色に見えたときに、心が通じているのかなと思いました」と述懐。さらに「孝作の弱みが見えたときに、鶴昇と似ている部分があるのかなと。彼の句が心を揺さぶって強くさせてくれたのかなと思います」とも思い返した。
撮影時のエピソードについて話が及ぶと、小平は「映画を作る毎日が、まさに『映画だなあ!』と。皆さんが用意してくれた日々でそれを感じることができました」としみじみ。高橋はリハーサル時に触れ「現地の空気を感じながらできたことがよかったですね。でも朝から晩まで同じ稽古場でやるので、正直かなりきつくて……。『ちょっと息抜きしませんか』と提案しても、監督が逃してくれないんです」と告白し、「稽古場が『プリズン』って呼ばれるようになってましたよね(笑)」と打ち明ける。対して小平が「孝作も玉も鶴昇も、みんな大好きで。どうにかこの愛を伝えたいと思ったんです。3人の人生と融合することで、初めて役ができあがると思った」と弁解すると、キャスト一同が「伝わってましたよ!」と返答していた。
最後に高橋は「今は情報がものすごい速さで流れていく時代。自分自身ってなんなのだろうと思うときもありますが、孝作のように立ち止まって振り返ってみると、ちゃんと足跡が付いている。今の自分を肯定してくれるんです。これから1歩ずつ歩き出すきっかけになったら」とコメント。芋生は「玉の人生をまっとうできたことが幸せだなと。彼女の存在を忘れないでいてくれた孝作さんにも感謝しています。たくさんの方に観ていただけたらうれしい」と語りかけ、イベントの幕を引いた。
「初めての女」は全国で順次公開中。
※高橋雄祐の高は、はしご高が正式表記
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おおとも ひさし @tekuriha
「初めての女」高橋雄祐が厳しいリハ回想、芋生悠は“グルーヴが合う”共演者との撮影に感慨 - https://t.co/3BgElhkLJo