ドキュメンタリー映画「
本作は「東京干潟」「蟹の惑星」を手がけた
今回の上映に際して、村上は「私の人生の中でこれほど両親を見つめたことはなく、初めて両親を一人の人間として、さらに言えば一個の生命として見つめることが出来たと思います」「人間は生まれて死ぬ、その間の営みが生きるということである。そんな当たり前のことを父と母の映画を作りながら改めて知ることが出来ました」とコメント。あわせて、国立映画アーカイブ主任研究員の岡田秀則は「人間の死を真正面から扱いながら、湿っぽい感情を催させることなしに生き物の厳然たる生を感じさせるという意味では、実はこれまでの村上作品に真っすぐ連なる一本でもある」とつづっている。
村上浩康 コメント
私の父は2019年に胆管がんを患い、以後入退院を繰り返していましたが、最期は病院での治療も難しくなり看取りをすすめられました。現代では多くの人が病院や施設で亡くなり、身内であっても人の死を間近で見ることはめったにありません。そこでこの機会に看取りの過程を出来るだけ綿密に撮影してみよう、カメラを通して人の死とじっくり向き合ってみようと思いました。
その結果、父の看取りをしている小さな茶の間から、高齢化社会や老々介護など今の日本が抱える様々な現実が見えてきました。そして父が衰弱していくのに対して、逆に母が生を実感していく過程も見えてきました。家に出入りする様々な人たちとの出会いの中で、母はイキイキと活力を得ていったのです。父の死を撮ることは、母の生をも撮ることなのだと解りました。私の人生の中でこれほど両親を見つめたことはなく、初めて両親を一人の人間として、さらに言えば一個の生命として見つめることが出来たと思います。
私が生を受けたのは両親のおかげであり、その生も意外に儚くあっけない。そのことを父が死をもって教えてくれました。人間は生まれて死ぬ、その間の営みが生きるということである。そんな当たり前のことを父と母の映画を作りながら改めて知ることが出来ました。
岡田秀則 コメント
最新作の「あなたのおみとり」によって、村上浩康というドキュメンタリー作家が新たな領域に踏み入ったことは間違いないだろう。だがこの映画は、これまでの村上作品がまとってきたキャメラの優れた即物性を裏切ることも決してない。人間の死を真正面から扱いながら、湿っぽい感情を催させることなしに生き物の厳然たる生を感じさせるという意味では、実はこれまでの村上作品に真っすぐ連なる一本でもある。
村上浩康の映画作品
リンク
村上浩康 @murakamihiroyas
早速、映画ナタリーさんで紹介していただきました。 https://t.co/It2cNkE0l8