映画「
クォン・ヘヒョは「20年前に『冬のソナタ』関連で来たことがある東京へ、またこうしてやって来ました。皆さんとお会いできてとてもうれしく、光栄です」と笑みを浮かべて挨拶。ホン・サンス作品に数多く参加してきたと前置き「監督からオファーをいただくときは、いつも同じ形です。『いつからいつまで映画を撮る予定なんだけれど、(参加する)時間はある?』と。それで終わりです(笑)。観客の皆さんはご存知かと思いますが、ホン・サンス監督は世界でも類を見ない、特別な映画の撮り方をします。私は撮影の前日まで、どんな映画になるのかまったく知りません。撮影の約1時間前に、その日撮影する分の台本をいただくんです。監督が当日の早朝に書いた台本です。そしてその日撮影した事柄の中から監督はいろんなことを考え、次の日の計画をするんです。それを繰り返して撮影されたこの作品を、私はとても気に入っています」と楽しそうに振り返った。
また「私が撮影前に知っていた情報は2つしかありませんでした。監督からは『君は主人公の役』『主人公の仕事は映画監督だよ』と言われました」と笑いつつ「このようにお話しすると誤解を招くかもしれませんね。監督の台本は完璧です。だからこそこのような作品が生まれるんです。私たちはアドリブをすることは一切ありません。本当に精密に物語を作っていて、何度もテイクを重ねて撮り直しながら映画を作っています」とホン・サンスの仕事に敬意を示す。そして苦労したシーンを思い返し「台本は撮影の約1時間前にもらいますから、その状況で毎日撮影することは難しかったです。ワインを飲むシーンは1テイクで17分間撮りましたが、セリフ量はA4の紙5枚分ほど。それを一言も間違えず、3人の俳優でアンサンブルを生み出すにはかなりの集中力が必要でした」と語った。
本作ではアパートの階が変わるとともに、物語が枝分かれしていく。クォン・ヘヒョは「監督の作品世界は非常に特別な構造です。つながっているようで、つながっていないような構造と言いましょうか……。監督はあれこれたくさん撮っておいて、あとで編集で順番を変えてまとめるという方ではないんです。この作品も順撮りですので、撮影を進めながら私も毎回驚かされていました。わあ、これはいったいどういうことなんだろう?って」と述べる。MCから「出演作を決めるときの基準は?」と聞かれると「役柄の大小にかかわらず、面白そうだなと思ったら参加します。私は若い頃からホン・サンス監督のファンでしたらから、なんとか時間を割いて出演したいと思っていました」「28年以上にわたって唯一無二と言える映画の語り口を持っている方ですし、本当に素晴らしい芸術家。全世界の人に届けているインスピレーションは、とても大きいものがあると思います」と答えた。
劇中でギターを演奏するシーンがあることにちなみ、クォン・ヘヒョがギターの弾き語りを披露する一幕も。ギターを奏でながら「上を向いて歩こう」を日本語で歌い上げると、客席から大きな拍手が起こる。それを聞いたクォン・ヘヒョは「俳優をやり始めて33年目ですが、試写会のあとでこんなふうに歌ったのは初めてです」と照れ笑いを浮かべた。そして最後に「このようにホン・サンス監督の作品を通して皆さんとお会いできてうれしいです。その一方で、上映後にこのような形で皆さんにお会いすると、映画に浸っている皆さんの気持ちを壊してしまうかもと気まずい思いもあります。ただ今回は本当にうれしい場になりました。これからもこの作品に多くの関心を寄せていただけたら」と呼びかけ、イベントの幕を引いた。
「WALK UP」は、6月28日より全国ロードショー。
映画「WALK UP」予告編(ロング版)
クォン・ヘヒョの映画作品
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