台湾・日本合作映画「
「悲情城市」のホウ・シャオシェンがプロデュースを担った本作。バブル期の台湾を舞台に、自分たちの店と家を手に入れることを夢見る父子の物語がつづられる。バイ・ルンインが11歳の息子リャオジエ役、リウ・グァンティンが父親役でダブル主演。門脇は、経済的には恵まれているが空虚な日々を生きる人妻・ヤンジュンメイ役で初の台湾映画出演を果たした。
門脇は観客を見渡し「日本でこうして公開できることがうれしいです。10代の頃から台湾映画が大好きで、いまだに実感が湧かないくらいです」と口にする。門脇を起用した理由についてシャオ・ヤーチュエンは「ホウ・シャオシェン監督から何度も、『機会があったら日本の方と仕事をしてみるといいよ』と勧められていたんです」ときっかけを明かし、「Netflixで『浅草キッド』を観たことがあり、麦さんにお願いするのはどうだろうと思いました。まなざしで芝居をしている印象があったんです」と伝えた。
門脇の印象を尋ねられるとシャオ・ヤーチュエンは「僕は何より、ストレートで豪快な麦さんの性格が好きでした。言葉が通じなかったけど『浅草キッド』と同じようにまなざしで演技をしてくれて、ファインダーをのぞいて美しいなと思っていました」と回答。門脇は「中国語の勉強はしましたが文法から学ぶ時間はなく、セリフは丸覚えでした。相手の方のセリフまでは覚えていないので『止まったかな?』と(タイミングを見計らって)セリフを言うこともあって。でも、その役にとって大切なエッセンスを抽出して自分とリンクさせることが役者の仕事。外側のことは技術や自分の努力で補うものだと思っているので、不安はありませんでした」と振り返った。
門脇が演じたヤンジュンメイに関して、シャオ・ヤーチュエンは「最初に麦さんにお手紙を書きました。今の時代の女性ではないので、背景を伝えたんです。麦さんはしっかり把握していましたし、本当によくやっていただきました」と彼女をたたえる。門脇は「場所の空気、メイクや衣装で(役について)つかめる瞬間がまれにあって。まさに今回がそうでした。メイクや衣装で、ヤンジュンメイが“がんばって着飾ってる人”+“裕福な人”と伝わりましたし、それなのに孤独を感じているというところが自分にとってキーになりました」と語った。
続いて話題は、門脇との共演シーンが多かったというリウ・グァンティンに。門脇は「顔合わせはリモートで行われました。16人から17人ほど参加していたのですが、1枠だけ『ホームページの写真を貼り付けてる?』というくらい美しい人が写っていて。それがリウさんでした。リモート画面の1枠だけで映画が撮れそうでした」と笑顔でエピソードを披露した。
台湾と日本の撮影現場の違いについて門脇は「まずスケジュール感が違います。日本だったら10シーンくらい撮影するような日に、2シーンしか撮らなかったり。ワンシーンにかける時間が桁違いなんです。食事の時間もしっかり取っていて、ごはんが全部温かいんです。驚きました」と述べる。シャオ・ヤーチュエンは「いつも通り撮影していたので、わざと遅く撮ったわけではないのですが、麦さんが気持ちよく仕事できていたらならうれしいです」とほほえみ、「僕もコマーシャルを撮るときは早く撮ります。映画のときは出演者が安全か、そして安心感を持って仕事をしているかを考えるので、ゆっくりめになるのかな」と説明した。
最後に門脇は「監督の役に対する掘り下げ方は、“いい人”や“悪い人”ではない。その温かくて広くて深いまなざしに救われると思います。私はすごく救われました。日本の映画館で観られるのは貴重な機会だと思いますので、多くの人に観ていただきたいです」、シャオ・ヤーチュエンは「この映画は“選択”というものをテーマにした映画だとも思っています。皆さんが気に入ってくれるとうれしいです」と呼びかけイベントを締めた。
「オールド・フォックス 11歳の選択」は、6月14日に東京・新宿武蔵野館ほか全国で公開。
矢口晶一 @tamagawajyousui
【イベントレポート】シャオ・ヤーチュエン来日、門脇麦の起用はホウ・シャオシェンの言葉がきっかけ https://t.co/c9MRlVh1k3