本作は出家した兄のティーに会うため青年タムが旅に出たことから始まる物語。彼はドンシンタム島の寺院で兄が住職を殺して消えたといううわさを耳にし、事情を探るためしばらくとどまることにする。その村では死後に遺灰を彫像に込めて祭る風習があり、タムは彫像を神として崇め、盲信的に信仰している村人たちに疑問を抱き始める。そんなある日、見習い僧のクンがミナという女性にお守りのフンパヨン人形を渡したところ、彼女は奇怪な行動を繰り返すように。こうして村を恐怖に陥れる事件が次々と起こっていく。プーウィン・タンサックユーンがタムを演じ、彼と島で出会うテーにプーンパット・イアン=サマンが扮した。
満員の会場に登場したポンタリット・チョーティグリッサダーソーポンは「ワクワクしていて、光栄です。温かい空気を感じて、映画作りのパワーをいただきました」と笑顔を見せる。本作制作のきっかけは、ロケ地に出会ったことだったそうで「リアルに描きたいと思ったので、実際の場所で映画を撮影しています。彫像の中には実際に人の遺骨が入っていて、それぞれの像の気持ちが映画の中に現れているんです。儀式のシーンはフィクションの部分もありますが、ほとんどのものはあの土地のものです」と紹介。会場からは彫像が本物であることに対し、驚きの声が上がった。
キャスティング経緯に話が及ぶと、ポンタリット・チョーティグリッサダーソーポンは「UpとPhuwinはオーディションで選びました。Phuwinはもともと幽霊を信じていなかったので、タム役にぴったり。都市から島に来た青年の雰囲気にも合っていて、適役でした」と語る。また「Upが演じたテーは自閉症の青年でとても難しい役どころです。もともとUpの作品も知っていましたし、彼の演技も好きだったのですが、私が求めているキャラクターになり切れるか知りたくてオーディションを行いました」と明かし、「脚本をすぐに渡したわけではなく、自閉症の青年をどう演じるか?と宿題を出したんです。彼はしっかり準備して、演技を見せてくれました。その後、脚本を渡して、改めて演じてもらいました。ワークショップも行いましたし、自閉症の子供にも実際に会ってもらったんです。UpとPhuwinにこの映画に出てもらったことはとてもスペシャルなことで、キャラクターにとってベストな選択。2人の努力は素晴らしいものでした」とたたえた。
イベント中には作品の内容にちなみ「怖いものは?」という質問が飛ぶ。ポンタリット・チョーティグリッサダーソーポンは「一番怖いのは幽霊ではなく、人間です。人間は隠していることがあるからです」と回答。撮影中に恐怖体験はあったか?と問われると「ありました。撮影のときに本物のフンパヨンをスタッフに持ってきてもらったんですが、呪術を唱えるシーンでキャストのニック(クナティップ・ピンプラダブ)が薄ら寒く感じたそうなんです。その後、撮影が終わったあとホテルの部屋に着いたら鏡やテレビに人影が写っていたそうで。もうこんなところにはいられない!と、荷物をまとめて私の泊まっているホテルに来ました。本物の呪術を唱えたので、フンパヨンを起こしてしまったのだと思います」と裏話を明かす。会場がざわつく中、「日本の映画ファンに私の映画を観てもらいたかったので、今日はフンパヨンを持ってきました。いいフンパヨンです!」と茶目っ気たっぷりに掲げ、笑いを起こした。
最後に「私の映画を楽しんでくれるかな?と気になっていたんです。こうして満席になって、心を開いて作品を観てくださって、これからの映画作りのために大きな力をいただきました」と述べ、「UpとPhuwinにもファンの皆さんがこの映画を気に入ってくださったことを伝えたいと思います」と約束し、イベントの幕を引いた。
なお「フンパヨン 呪物に隠れた闇」は2024年に日本で公開される予定だ。
タイホラー「フンパヨン 呪物に隠れた闇」予告
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