「花束みたいな恋をした」「ミステリと言う勿れ」の
2人は今回が初タッグ。出会いは2013年のロカルノ国際映画祭で、菅田が主演した映画「共喰い」の監督・青山真治から紹介されたという。このたび菅田が出演オファーを即決し、昨年の11月末から行われた撮影で10年ぶりに再会した。
劇中で“ラーテル”というハンドルネームを使い、転売で稼ぐ主人公・吉井良介を演じた菅田は「黒沢監督の頭の中が毎日少しずつ開示されていく撮影は、とても楽しく、贅沢な時間でした」と回想する。そんな彼に関して、黒沢は「菅田さんは、誰の目も釘付けにする俳優だ」「持って生まれた資質と計算とを巧みに組み合わせることのできる実に聡明な方なのだろう」「正体は不明だが、この正体不明こそ大スターの証なのだなとあらためて納得した」と言及した。
「Cloud クラウド」は東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。配給は東京テアトルと日活が手がける。
菅田将暉 コメント
生活の中に潜む、怖さとユーモア。
黒沢監督の頭の中が毎日少しずつ開示されていく撮影は、とても楽しく、贅沢な時間でした。ピュアで歪な人間のアクションがたまらない。
とにかく完成が待ち遠しい。 映画「Cloud」宜しくお願いします。
黒沢清コメント
作品について
現代日本の片隅で、時折まったく無目的と思われる暴力事件が起きることがある。原因を探っていくと、そこにはちょっとした恨みやムシャクシャした気分がインターネットによって集結し肥大していくシステムがあるようだ。私はこうした現象がアクション映画の題材になるのではないかと考え、この企画をスタートさせた。主人公は、ささやかな金儲けによって少しでも人より優位に立ちたいと願う、ごくありふれた男である。この人物が不用意に周囲の恨みを買い、最後には命を賭けた死闘へと引きずり込まれる物語だ。しかし撮影が進むにつれて、私はこの映画がそう簡単にスカッとするアクションにはなっていかないことに気づいた。その理由のひとつは、主演の菅田将暉が驚くべき演技力でこの人物に深い陰影と複雑さをもたらしてくれたこと。もうひとつは、この死闘が思いがけず“戦争”の様相を見せ始めたことだ。金儲けと復讐が折り重なって増幅され、ついに暴力が作動し、気が付いたらもう引き返せなくなっている。現代の戦争も、ひょっとするとこのようにして起こるのかもしれない。
菅田将暉について
菅田さんは、誰の目も釘付けにする俳優だ。何と言ってもあの顔つき、そして声、立ち姿、奥の方にいても一発で菅田将暉とわかる唯一無二の個性があらゆる場面から立ち昇る。にもかかわらず、人混みの中だと市井の人物に溶け込んでしまう一般性、庶民性のようなものも同時に持ち合わせている。持って生まれた資質と計算とを巧みに組み合わせることのできる実に聡明な方なのだろう。そんな菅田さんにお願いした主人公吉井良介は、真面目で一途な悪党という、現代日本映画ではほとんど見かけない人物である。キャラクターの分類としては矛盾しているのかもしれない。しかし菅田さんはこの難しい役を極めて繊細に、かつ堂々と演じてくれた。繊細な部分が計算で、堂々としたところが資質なのか、あるいはその逆なのか、どちらかはわからない。いや、どちらも計算かもしれない。それとも全ては直感なのか。正体は不明だが、この正体不明こそ大スターの証なのだなとあらためて納得した。
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