64歳で初めて長編映画を発表し、それが遺作となった
小林は中学生にして8mmで映画を監督し、東京造形大学の在籍時に撮った「マルボロの香り」は富士8ミリコンテストで学生優秀賞を受賞。大学の同期である
本作はテラスハウス(連棟式住宅)に住む2組の住人たちの“告白できない思い”が不思議に交差しながら、物語が意外な方向に転がっていくラブストーリー。登場するのは、片思いの相手とあくまで女友達として同居する油絵講師の容子、容子と暮らしながら次第に大学時代の男友達に惹かれていく由佳里、彼女たちと同じテラスハウスに越してくる大学生の姉弟・柊子と悠輝だ。やがて悠輝が不審な行動を取り始め、柊子は弟が隣に住む女性にストーカーまがいの行為をしていることを突き止める。
犬童は「やっと60歳を越え初長編を撮ったら、性癖がダダ漏れだわ、一体昭和何年だみたいな世界。困ったやつだが、その正直さ故に噛んでも噛みきれない味わい深き世界を生み出した。が、小林はもいういない。急死した。半世紀に渡って映画と戯れ、やっと花開いたら、開きっぱなしで公開も途中なのに忽然と消えてしまった。次回作が楽しみだ、なんて、もうそんなこと言っても詮無いんだな。サヨウナラ」とコメントを寄せた。
またアニメ「ONE PIECE」のニコ・ロビン役で知られる声優の
池袋シネマ・ロサでは、小林が中学2年生で自主制作した8mm映画「山小屋生活」を同時上映。公開期間中、犬童を司会にゲストを招いたトークショーも開催される。現在、予告編がYouTubeで公開中だ。
映画「静かに燃えて」予告編
犬童一心(映画監督)コメント
「噛んでも噛みきれない味わい深さ」この監督、女性が女性に少しずつ惹かれ、身悶えていく様を慌てず騒がず舐めるように見つめている。どこか、監督個人の性癖がじっとりと滲むようだ。ヒッチコックがサスペンス映画だと言い張って、金髪美女をいじめ抜いて身も心も真っ赤に燃えているのが隠しきれていない状態を思い出す。監督は初長編なのに64歳。まさに谷崎潤一郎的な味わいとも言える。やっと60歳を越え初長編を撮ったら、性癖がダダ漏れだわ、一体昭和何年だみたいな世界。困ったやつだが、その正直さ故に噛んでも噛みきれない味わい深き世界を生み出した。が、小林はもいういない。急死した。半世紀に渡って映画と戯れ、やっと花開いたら、開きっぱなしで公開も途中なのに忽然と消えてしまった。次回作が楽しみだ、なんて、もうそんなこと言っても詮無いんだな。サヨウナラ。
池野みのり(脚本家)コメント
「静かに燃えて」のタイトルに納得。セリフがなくても伝わる丁寧な映像表現が心地よかった。
坂本俊夫(作家)コメント
ラスハウスに同居する二人の女性の関係がどう発展していくのか、何となく予想できた。しかし、もう一組の住人である姉と弟がこの二人とどうかかわってくるのか、なかなか観客に教えてくれない。また、あれっと思うような「小道具」が時たま現れ、見る者を惑わせる。どうしてだろう、何の意味だろうと、次のシーンを期待しつつ、主人公の恋心を軸に静かに進む映像を追いかける。そして、それらが終盤に氷解する。ミステリーを読むような気分で楽しめた作品でした。
筒井武文(映画監督 / 東京藝術大学大学院映像研究科教授)コメント
映画史には、素晴らしい処女作を発見した途端、その映画作家の新作を観ることが叶わないことに失望とも怒りとも収まりのつかない感情に駆られることがある。とりわけ、その作家が困難な製作条件を乗り越えて完成させ、しかも年齢が還暦を過ぎていて、創作欲が一層の高まりを示した時期に本人にも分からない理由で去ってしまうという例は前代未聞だろう。若々しく、かつ老成した、タイトル同様の矛盾した印象を受けるその作品を一刻も早く発見することこそ、映画の可能性を信じる者の態度であり、彼と映画へのなによりの供養となるだろう。
小林豊規の映画作品
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犬童一心 @inudoisshin
64歳の初長編にして遺作「静かに燃えて」限定公開、犬童一心や山口由里子が推薦(予告あり / コメントあり / 写真22枚) https://t.co/FYoro4LgOI