映画「
本作は実の息子とうまく関係を築けなかったタクシー運転手が、香港に住む難民の少年と心を通わすヒューマンドラマ。アンソニー・ウォンが中国から香港に密入境して来たチャン・バクヤッを演じ、パキスタン出身で香港在住のサハル・ザマンが交通事故で父親を失った少年ハッサンに扮した。
冒頭に「こんばんは!」と日本語で挨拶したアンソニー・ウォン。本作に出演した経緯について「過去に出演した『淪落の人』と同じ制作会社からのオファーだったのでとても信頼していました。ちょうどコロナ禍で仕事が減っていて『そろそろ映画に出演しないと演技ができなくなってしまうのでは』という思いもありましたね」と心情を吐露する。また脚本を読んだときのことを回想し、「この物語なら映画にできると思って」と述懐。監督のラウ・コックルイと対面したときのことを振り返り、「お会いしてみるとすごく礼儀正しい方だったので、ぜひ一緒に仕事をしたいと思いました。ただ新人監督さんでしたので脚本はまだ完璧ではなくて。それからやりとりを重ね、たくさん話しながらこの映画を作っていきました」と思い返した。
複雑な感情を抱える役どころを演じたアンソニー・ウォンは、撮影時を振り返り「自分自身が役のことを考えすぎないように意識しました」と明かす。ブルース・リーを例に挙げ「彼は敵を一発で倒すことが多いですよね。倒す前は必要以上にカンフーを見せるようなことはしない。僕も同じ気持ちでしたよ」と表現。車の中で息子と泣く場面の撮影が一番大変だったそうで「当日は短パンを穿いていて非常に寒くて。おなかも空いていました」と状況を説明する。「撮影現場の近くにラーメンの屋台があったので、熱々のラーメンを注文したんです。でもちょうどできあがった頃に『スタンバイです』って。だからなかなか食べられなくて、『熱々だったのに……』という思いで泣いてしまったんです(笑)」とユーモアを交えながら話した。
本作ではザマンはじめ中華圏以外の俳優との撮影も多かったそうだが、「現場は和やかでしたよ」とほほえむアンソニー・ウォン。「サハルの『サハ』は広東語で“天ぷら”という意味なので、現場では彼のことをずっと『天ぷらくん』って呼んでました」とザマンとの仲の良さをうかがわせる。アンソニー・ウォンは「監督にもいろいろな意見をさせていただきましたが、カメラマンとか照明スタッフさんも積極的に意見を伝えていて。監督はすべて聞いてくれたので撮影はとても順調でした。ずっとこんな方と仕事をしたいなと思いましたね」と賛辞を送った。
舞台挨拶では観客からの質問コーナーも実施。アンソニー・ウォンが「その前に条件が1つあります。質問した人は必ず10人の友達を映画館へ連れて行くこと」とユニークな注文をする一面も。観客の1人は、台湾の第59回金馬奨で最優秀主演男優賞を受賞した際に、ザマンを舞台上に連れて行ったときの心情について質問する。アンソニー・ウォンは、ザマンも新人賞にノミネートされていたことを述べつつ「彼は受賞を逃してしまって、泣いていたんです。まだ小さい彼がこの盛大な授賞式に参加するというのは1度か2度かのチャンスだと思う。だから彼と一緒に登壇して、この雰囲気を素晴らしい思い出にしてほしかった」と言葉を紡ぐ。しかし、その後に行われた香港アカデミー賞ではザマンが新人俳優賞を獲得し、自分は受賞しなかったことを告白。アンソニー・ウォンは「彼は受賞するときに私をステージにあげてくれなかったんですよ(笑)」とボヤき、観客を笑わせた。
「白日青春-生きてこそ-」は全国で公開中。
tAk @mifu75
【舞台挨拶レポート】「白日青春」アンソニー・ウォンが来日、サハル・ザマンとの特別な関係性を振り返る(写真12枚) https://t.co/HorPcLUJmn