映像業界の性被害に関し、睡蓮みどりらが対策を要求「国や法律の力もお借りしたい」

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1月24日、東京・参議院議員会館の社会民主党・大椿ゆうこ事務所にて「映像業界における性加害・性暴力をなくす会」へのヒアリングが行われ、映画監督の東海林毅、俳優・文筆家の睡蓮みどり、俳優の今駒ちひろが出席した。

左から東海林毅、大椿ゆうこ、今駒ちひろ、睡蓮みどり。

左から東海林毅、大椿ゆうこ、今駒ちひろ、睡蓮みどり。

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映像業界の性被害とその現状を報告する会見を、2023年12月7日に東京・日本外国特派員協会で主に海外メディア向けに行なった同会。今回のヒアリングでは、刑法の整備や第三者機関の設置、医療体制の見直しなど国への要望を伝える。被害を告発しても、支援者が増えず被害者が置き去りにされていることに疑問を投げかける東海林は「被害届がなかなか受理されないことや、スラップ訴訟での二次加害など、司法にも問題があるのではないかと思っています」と話した。

睡蓮みどり

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映画監督の榊英雄から性暴力を受けたことを2022年に公表した睡蓮は、被害者に対する誹謗中傷などの二次加害がなくならないことに関して「これは“性暴力”というものがなんなのかきちんと認知されていないがゆえに起こるもの。『仕事が欲しくて自分から告発したんじゃないか』といったことを私自身も何度も言われてきました」と述懐する。また「告発した被害者や記事を掲載した媒体が、加害者側から名誉毀損で訴えられるスラップ訴訟は、性加害の有無について問われているものではない。それにもかかわらず、世間としては(名誉毀損の裁判で)加害者が勝つ=加害がなかったと誤認されかねないんです。これは問題だと思うので、国によってスラップ訴訟の規制をかけていただきたい」と述べた。

今駒ちひろ

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今駒は舞台演出家からセクハラ・DVの被害を受けた際のことを例に挙げ「警察に相談しても『恋愛だったのでは』と言われ、それがまた二次被害につながる」と声を上げにくい状況を吐露し、睡蓮も「警察からの二次加害はかなりひどくて『被害届を出しても大変なのはあなただよ』と追い返そうとされることもある。国の対策として性暴力の知識の啓蒙をしていただきたい」と同意する。また今駒は「私の場合、やむにやまれず被害についてSNS上に匿名で書き込んだら、加害者側から私がストーカー加害者として被害届を出され、警告を受けたんです。もちろん付きまといなどはしていないですが、本来被害者である私がストーカー加害者になってしまう、ストーカー規制法の悪用のようなケースもある」と口にした。

東海林毅

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そもそも被害が起きない環境を整備するために、東海林は「昨年、経産省のバックアップのもとできた映適(映画制作における労働環境の改善を目的とする日本映画制作適正化機構)が、フリーランスの労働者に向けて契約書の書き方を教えたり、セクハラ・パワハラへの相談窓口を用意してくれたが、強制力はないので繰り返されている。もっと積極的に音頭を取って、実行力のある対策をやってほしい」と呼びかける。また今後映像業界に入ろうとしている人たちに対しては「徒弟制度で権威勾配が強く、そこからパワハラ・セクハラが起こりやすいからこそ、事前の教育が大事。映画教育に限らず“性的同意”や“性の自己決定”について義務教育のうちにやっていただきたいのと、(卒業後に)映像業界に入っていく可能性の高い専門学校などで、もう1歩踏み込んだ啓発をやってほしい。国の助成金で講師を呼ぶことなどができないかと思っている」と具体的な案も出した。

左から服部良一、大椿ゆうこ。

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これらの話を受けて、大椿は「いい作品を作りたいのに、性加害によってそこに集中できない環境が腹立たしいですね」と述べつつ「労働問題として捉える土壌がなかなかないんだと思う」とコメント。東海林と睡蓮が、映像業界や俳優に労働組合がないことや、業界内から黙殺されている状況の中で組合を作る考えに至れなかったこと伝えると、大椿は「これって映画業界独立でやるのがいいんでしょうか。映画業界だからこそ起きやすい構造もあると思うが、芸能界全体で横に連携できる可能性はあるのかなと。決して簡単ではないと思うが、芸能分野で労働組合を作る視点を労働者側が持ち続けることも大事なのかなと思います」と見解を示す。

左から東海林毅、今駒ちひろ、睡蓮みどり。

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また、現在複雑性PTSDを発症して休業している今駒は、医療へのアクセスが困難であることも話題に出し「PTSDや性暴力の被害に関してきちんと診られる医師が少ないので、予約待ちでなかなか初診にすらたどり着けない。行けてもPTSDのカウンセリングには基本的に保険適用がないので医療費の負担が大きくのしかかる。被害を受けて職場を去り、経済状況が悪化している中で、カウンセリングは1回1万円前後が相場」と、被害者の社会復帰を厳しくさせている1つの原因を明かす。医療の体制について、同席していた社民党幹事長の服部良一は「厚生労働委員会でカウンセリングの保険適用についてヒアリングしたらいいのでは」と提案し、大椿は「国会で法制度の話が始まるのはだいたい4月以降なので、それまでにヒアリングをしましょう。(それを経て)国会での質問は記録に残りますから、皆さんに問題を知ってもらえる機会を作れるかなと思います」と協力する姿勢を示した。

最後に睡蓮は「内部からも変わらないといけないし、国や法律の力もお借りしたい」と念を押し、大椿は「今の芸能界も変わらざるをえない状況になってきていると思う。私にできることは協力させていただきたいです」と力強く宣言した。

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読者の反応

🌺大椿ゆうこ 社民党副党首 参議院議員/労働者の使い捨ては許さない!🌺 @ohtsubakiyuko

1月24日に、「映画業界における性加害・性暴力をなくす会」の皆さんと面談し、お話を聞かせて頂きました。ぜひ、お読みください。(続)

【取材レポート】映像業界の性被害に関し、睡蓮みどりらが対策を要求「国や法律の力もお借りしたい」 https://t.co/cjr21NZyKl

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