作品の核は友情、ケリー・ライカートが念願の企画「ファースト・カウ」を語る

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12月22日に封切られた映画「ファースト・カウ」より、監督を務めたケリー・ライカートのインタビューが到着。ジョナサン・レイモンドによる原作小説「The Half-Life」を映画化することになった経緯を明かしている。

ケリー・ライカート (c)GODLIS

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「ファースト・カウ」日本版ビジュアル

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本作は西部開拓時代の米オレゴン州を舞台に、アメリカンドリームを求めて未開の地にやってきた料理人クッキーと、中国人移民のキング・ルーを軸にした物語。意気投合した2人は“富の象徴”である牛からミルクを盗み、ドーナツで一攫千金を狙う。ジョン・マガロがクッキー、オリオン・リーがルーを演じた。

「The Half-Life」が初めて読んだレイモンドの小説であるというライカートは「その後『オールド・ジョイ』で彼と仕事をすることにつながりました。この小説は1800年代の物語で、2つの大陸が舞台です。そのため映画化する可能性で言えば、私にとっては手が届かないものでした。どうすれば『The Half-Life』を1つのプロジェクトとして成立できるか、長年にわたりジョンとよく考えていました」と振り返る。

「ファースト・カウ」場面写真

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2006年の「オールド・ジョイ」に始まり、2022年の「ショーイング・アップ」に至るまで何度も共同で脚本を手がけてきたライカートとレイモンド。「The Half-Life」の映画化は2人の念願の企画だった。ライカートは「ファースト・カウ」の制作に着手する前の数年間、ヨーロッパで1800年代を舞台にした別の映画を作ろうとしていたそう。「それはある種のファンタジーで、小さな村々について考え、ギュスターヴ・クールベやピーテル・ブリューゲルの絵を見る時間が多かったのです。しかし、そのプロジェクトが白紙になり、ジョンと私はいつものように『The Half-Life』をどう映画化できるかを考え始め、最終的に『ファースト・カウ』のアイデアにたどり着きました」と明かす。

「ファースト・カウ」場面写真

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物語の核になったのは、クッキーとルーが育む友情であると認めたライカート。映画の冒頭には、詩人ウィリアム・ブレイクの言葉「鳥には巣、クモには網、人間には友情」が引用される。彼女は「友情は作品の核になっています。『The Half-Life』にウィリアム・ブレイクの引用がありましたが、それはすべてのきっかけになっています。多くの友人と一緒に、友情を描いた映画を制作することはとても素晴らしかったです」と映画制作を振り返った。

1800年代の西部が舞台でありながら、資本主義や社会の分断、愛情深い異人種間の友情を描いた作品として現代に共鳴する「ファースト・カウ」。政治的な映画として解釈する余地はあるか問われと、ライカートは「どの映画もある意味政治的だと言えると思います。それは、私たちが興味を抱く物事の本質にほかなりません。権力はどこにあるのか? 人々は成功と生存のはしごのどこで落ちるのか? そして、それが互いの接し方にどう影響するのか? それが物語の核心であるように思えます。しかし、願わくば、映画は個々の登場人物の個々の状況についての物語であってほしいと思います」と答えた。

「ファースト・カウ」は東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国で公開中。

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