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本作は日常のささいなことで不安になる怖がりの男が、怪死したという母親のもとへ駆けつける道中で悪夢のような予想外の出来事に遭遇する物語。「ジョーカー」のホアキン・フェニックスが“最狂の帰省”に巻き込まれていく主人公ボーを演じた。
まずアスターは来日の喜びをにじませながら「アメリカでは4月に封切られて、日本が最後の公開地点です。これはある意味詩的だなと感じています。僕自身日本が大好きですし、おそらく、ほかの国の人より日本の人のほうが作品を理解してくれるんじゃないかと思っているんです」と会場へ語りかける。
さっそく観客から「監督は脚本を書く際、断片的なイメージから全体を作り上げていくんでしょうか? それとも描きたいテーマが先にあるんでしょうか?」と質問が上がると、アスターは「作品によってアプローチは違いますね。今回は優柔不断なさまであったり、不安を描くような作品を作りたいというところから始まりました。“不安を抱えた男を描くコメディ”を狙ったんです」と言って着想イメージをいくつか明らかにしつつ「イメージがぽっと浮かんで、さあこれをどう脚本にどう入れていこうと考えることもあります。ただ、今回は先に“バカげた映画”というトーンでいこうと思っていました」と答える。
また「監督の作品は共通して、死体の描写がすごいなと感じています。どこからあんなアイデアが浮かぶんでしょうか?」と尋ねられると、アスターは明るい調子で「どうやら死体の描写が好きというか、どんなふうに死体をめちゃくちゃにしてやろうかといつも考えていて……なんでだろうね、自分でもわからないんだけど始終考えているんです。僕の映画では首がはねられていたり、首がない描写が多いとよく人に指摘されます。(この作業は)やりがいが大きくてね、なるべくしてなるという感覚なんです。次はどういうふうに人の頭部をはちゃめちゃにしてやろうかってね」と回答して会場を笑わせた。
「ボーはおそれている」のアニメーションパートには、「オオカミの家」で知られるクリストバル・レオンとホアキン・コシーニャが参加している。彼らとの仕事について聞かれたアスターは「当初、劇中劇はすべて舞台劇としてまとめようと思っていました。でも企画を進めていくうちに予算が足りないとわかり、作り込めない部分はアニメにするしかないと。それでフィジカルな舞台劇とアニメとで半分半分にしました」と経緯を説明。「彼らの『オオカミの家』を観て非常に気に入ったので、僕から声を掛けたんです。ストーリーボードはすでに僕が描いていたので、その枠の中でやってほしいと発注しました。なので最初はやりにくかったんじゃないかなと思います。でもぜひ協力したいと合意してくれた。絵柄の案やアイデアを出してくれたし、僕はそれにフィードバックしていった。僕もこだわりがありますから、画として美しいものをと思う一方、映画のトーンに一貫性を持たせなくてはいけません。あれこれ細かいことも言わなくてはいけなかったので、彼らとしてはフラストレーションがたまっていたのではないかと(笑)。ただ2人はこのシークエンスを誇りに思ってくれているようですし、コラボレーションは僕としても学びになりました。いつかアニメ映画を撮りたいです。長いプロセスでしたが、彼らとの仕事はとても楽しかったです」と今後に期待を持たせた。
また「監督にとって家族とは?」という問いには「わずらわしく、終わりのない義務感のようなものです(笑)」とシンプルに返答。最後は試写を楽しんだ観客へ「作品を気に入ってくれたなら、どんどん友達に伝えてください。もしそうでなかったとしたら(今日のことは)忘れて、観に行かないといけないねと友達と話してください」と冗談を飛ばしてイベントを締めた。
「ボーはおそれている」は2月16日に全国で公開。
※「ボーはおそれている」はR15+指定作品
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アリ・アスターの映画作品
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出町座 @demachiza
“アリ・アスター監督『ボーはおそれている」のアニメーションパートには、『オオカミの家』で知られるクリストバル・レオンとホアキン・コシーニャが参加している。”
ということなので、『オオカミの家』未見の方はぜひご覧ください。
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