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11月23日より3週間限定で上映されている本作は、Netflixのアニメシリーズ「攻殻機動隊 SAC_2045」シーズン2を再構成したもの。「新聞記者」「余命10年」の
神山は「最後の人間」のベースになったシーズン2について「苦労していたライティングの部分をCGディレクターの松本勝さんに助けてもらった感じです」とコメント。荒牧は「松本さんとはいろいろと仕事をしてきましたが、もっとフォトリアルなものとか実写映画のほうを志向していて、もともとアニメ志向ではないんですよ。ですのでシーズン1のときはあえて声を掛けなかった。でもシーズン2で画作りを改善することになり、ここはやっぱり参加してもらおうと」と明かす。
シリーズ構成も兼任した神山。日本においてポスト・ヒューマンに覚醒したとされる中学生・シマムラタカシが開発した、人々をNにするプログラム・ミニラブのアイデアがどこから出てきたのかと聞かれると「物語のモチーフとなるものとして小説『1984』をピックアップしているんですが、同時にもう1冊、メインのモチーフにするかどうか迷った本がありました。それが『夜と霧』でした」と答える。
アウシュヴィッツの強制収容所に収監された心理学者ヴィクトール・E・フランクルの手記である「夜と霧」。神山は「あれを読むと、ある種の強烈な体験は個人の中に深く刻まれているけれど、普段は表に出てくることはなくて、当時者たちはむしろ数少ない“いいこと”だけをよく覚えていたりする。でも、この強烈な体験こそが、個人の存在を確立させるものでもある。これはシマムラタカシが、従妹のユズやクラスメイトのカナミの出来事で体感したことでもあります。逆に言えば、その体験があることで人と人の間に壁が生まれてしまう。だからシマムラタカシは、この壁を取り払ってしまおうと考えたわけです。それで強烈な体験を呼び起こし、郷愁とともに浄化の感情を湧き上がらせることで、それを実行しようとした」と説明した。
さらに神山は「そこでタカシに影響を与えたのが“空挺部隊”にもらった『1984』です。『1984』を『摩擦をゼロにする方法としてのダブルシンク』を示した本として読むのは本来の読み方ではないと思う。だけど彼は、まだ幼かったからかもしれないけれど、そこにすべて答えがあると思っちゃった。こうしてタカシは、人類全体を幸福にするため、ミニラブを使ってNを増やそうと考えたんです。……ただこうした内容を、素子たち公安9課の活躍を通じて明らかにしていく、という形で描くのは苦労しました」と吐露。荒牧は「しかも仮にシマムラタカシを追いかけたとしてそれがエンタテインメントになったかと言えば、そうもならない可能性も十分あったと思います。そこが難しいところで」と語る。
草薙素子というキャラクターについてはどう考えたかと問われると、神山は「これはあまり気付かれていないことなんだけど、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』第12話『映画監督の夢』のときに素子はすでに今回の答えに近いことを言っているんですよ。脳だけになった映画監督が彼女に『(お前は)リアリストだな』と言うんです。それに対して素子は『現実逃避をロマンチストと呼ぶならね』って返す。言外に自分のことをロマンチストだと思っているということがわかるセリフです。でも夢を生きようとするなら、現実をどこまでクリアにしていくかを抜きには考えられない。それをやっているのが素子ということです」と話す。
そして神山は「意外と素子のことをスーパーリアリストだと思っている人が多いんですけど、みんな『S.A.C.』の第12話を忘れているんですよ。そしてタカシくんとしては、現実と夢がシームレスだったからこそ、素子をNにすることができなかった」と述懐。荒牧は「変わっていく正義にその都度ちゃんと対応していく人という印象は変わらずありますね。原作から始まって、映画やテレビシリーズを経て、素子はずっとさまざまな状況に対応しているんですよね。『APPLESEED』シリーズのデュナンはパートナーであるブリアレオスありきのところがあるんですよね。素子は、そこはどうでもいいというか、パートナーがいても別に自分がそこに左右されることはない。神山さんがさっき言ったロマンチストっていう言葉はすごく的確だったと思いますね。現実と夢に真摯に向かい合っているキャラクターだと思います」と続けた。
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