第36回東京国際映画祭と国際交流基金(JF)の共催プログラム「交流ラウンジ」の一環で行われた本企画。グー・シャオガンは本映画祭で黒澤明賞を授与され、さらに長編2作目となる新作「西湖畔に生きる」がコンペティション部門に選出されている。山田が黒澤明賞の選考委員であり、彼の才能を高く評価していることから本日の対談が実現。黒澤明賞は巨匠たちに捧げられてきた栄誉だったが、若い映画人にこそ授与すべきという山田の意向もあり、今年度はグー・シャオガンとインドネシアの映画監督モーリー・スリヤが選ばれた。
グー・シャオガンの長編デビュー作「
「春江水暖」は認知症の進行により介護が必要となった母親と、それぞれ複雑な事情を抱える4兄弟の姿を描いた人間ドラマ。主な出演者はグー・シャオガンの親戚や知り合いであった。2作目の「西湖畔に生きる」では、中国緑茶の産地として有名な西湖の沿岸に暮らす母親と息子の関係を軸に、経済環境の変化の中で揺れる家族の物語がつづられ、人気俳優ウー・レイが主演を務めた。
グー・シャオガンは「『春江水暖』はどんな映画になるか自分でもわからず、観客のことは気にせず撮りました。でも『西湖畔に生きる』は逆で、観客がより作品に没入できるよう意識しました」と振り返る。また「山田監督は、観客を思って軽やかで温かな映画を作ってきた。だから自分も『西湖畔に生きる』では、どんな観客にもわかってもらえるような映画を作りました」と説明。山田は「その作品が喜劇なのか悲劇なのか決めるのは観客。作り手が笑える映画を作ろうと思っても喜劇は作れない。人間が描けているか。それだけが問題で、大事なことは観客が決めるんです」と自身の創作のスタイルに言及する。
そして山田は「『春江水暖』は続編がいくらでもできる。(上海国際映画祭では)今度会ったらまた話をしようと言って別れたんですよね」と切り出し、続編の構想を提案する。その内容は「実はもう1人甥っ子がいて、彼は北京電影学院に通っている。あるとき彼の映画が完成したが結果は大失敗。傷付いた甥っ子を気にしながらも家族は素知らぬふりをする」というもの。「男はつらいよ」の“寅さん”を想起させる人物像に、グー・シャオガンは「そんな話ができてうれしいです」と笑顔を見せ、「山田監督と映画の話をしていると、いつもカンフーの達人のようだなと。勉強になります」と感心した。
また山田は「みんなが一生懸命働く中、1人だけちっとも働かないんだけど、人々を笑わせて勇気付けるような人物。映画を作る仕事は、その延長線上にあるんだと思います。人々を励まして元気になってもらうために、僕たちは映画を撮ったり、歌を歌ったり、絵を描いたりしている。寅さんのような主人公が中国で活躍できないだろうかとはよく考えます。中国の人々が寅さんのような人間を愛さないわけがない」と述べ、「彼にもそういう映画をぜひ作ってもらいたい」とグー・シャオガンに熱い視線を向ける。「がんばります」とうなずくグー・シャオガンは「監督の新作も観たいです」と伝え、互いにエールを送り合った。
本日の対談の模様は、東京国際映画祭のYouTubeチャンネルにて後日配信される。
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