時差ボケのヴィム・ヴェンダース、役所広司の肩で寝たフリ
2023年10月23日 21:05
9 映画ナタリー編集部
第36回東京国際映画祭のオープニングを飾る「PERFECT DAYS」が本日10月23日に東京・ヒューリックホール東京でアジア初上映。上映前の舞台挨拶に監督を務めたヴィム・ヴェンダース、主演の役所広司をはじめとしたキャスト陣が登壇した。
「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」で知られるドイツ出身のヴェンダースが、日本の公共トイレに「small sanctuaries of peace and dignity(平穏と高貴さをあわせ持つ、ささやかで神聖な場所)」を見出し、清掃員の平山という男の日々のゆらぎを丁寧につづった本作。役所は第76回カンヌ国際映画祭の男優賞を受賞し、第96回アカデミー賞では国際長編映画賞の対象となる日本代表作品に選出されている。
ヴェンダースは「友人の姿も客席にありますね。1年前は絶賛撮影中だったので、友人たちに会えなかった。今、横にいるみんな(キャスト)のせいで、友達に会うことができなかったのです」と笑い交じりにとぼけつつ、「キャストもスタッフも日本人の映画。撮影のときから観客の皆さんに伺いたかったのは、『この映画はドイツ人監督が撮ったものだと思いますか?』ということ。自分はドイツの監督だと思ってきましたが、自分には日本の魂もあると感じました」と明かす。各国の映画祭での上映を振り返りつつ、多くの日本人が観る今日の上映について「今夜が本番です。ぜひ楽しんでいただきたい」と呼びかけた。
ゆったりした口調で話すヴェンダースを横目に、役所が「監督は飛行機が4時間も遅れて、ちょっと前に日本に着いたばかりで時差ボケのようです」と話すと、ヴェンダースが役所の肩で眠るしぐさで笑いを誘う一幕も。続いて役所は、「平山みたいに生きたい。この生き方がうらやましい」というヴェンダースが現場で言っていた言葉に触れ「そういう人物を目指せばいいのか、と。都会で生きている男だけど、ほかの人とは違うゆったりとした時間にいる。彼だけが森の中で静かに呼吸しているような人物だなと感じていました」と、平山の人物像を紹介した。
本作で映画初出演を果たした中野有紗は「初めての演技で右も左もわからない中、素晴らしいチームに支えていただきました。こんな場所にも連れてきていただけて、本当にありがとうございますという気持ちでいっぱいです」と吐露。するとヴェンダースは「映画の中で初めて演技をするとき、一番最初のシーン、その瞬間に真実が映るんです。その人が俳優なのかどうか。今回一番最初に撮ったのは銭湯のシーンでした。最初の瞬間、彼女は生まれ持っての役者だと思いました」と称賛の言葉を送った。
平山と奇妙なつながりを持つホームレス役の田中泯は「僕は人に見えない役。役所さん(平山)からしか見えない人になっています。一言もしゃべりません。だから今日もしゃべらないでおこうかなと思ったんですが(笑)」と挨拶する。続いてヴェンダースから「まもなく木漏れ日が差すから、そこで踊ってくれ」と言われた公園での最初の撮影を回想。「これはすごくうれしかった。山田洋次監督から近いことを言われたことはありますが、映画監督から『踊ってくれ』と言われたのは初めて。それからの毎日、短い時間でしたが、本当にうれしくてうれくてしょうがなかった」と充実の撮影を振り返った。
石川さゆりは平山が休日に訪れる居酒屋のママ役で出演。ヴェンダースの名前にあまりなじみがなかったそうで「歌い手の好奇心で『出ます』と言ってしまいました」と正直に打ち明け、笑いを誘う。さらに映画の感想を「私たちの歌作りととっても似たものを感じました。監督は音楽が大好きな方。映画にもいろんな音楽が流れていて、うれしかった。あざとく、見得を切るような歌もいいんだけど、ときに木漏れ日の中から『1人はさみしいよね』『でも私たちは1人じゃないよね』と言ってくれる歌もある。そんなことを感じる、本当に温かな映画でした」と話した。
「PERFECT DAYS」は、12月22日より東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。明日10月24日から30日にかけて東京・TOHOシネマズ 日比谷では先行上映も行われる。このほか舞台挨拶には平山の同僚の清掃員を演じた柄本時生、そのガールフレンドに扮したアオイヤマダ、平山の妹役の麻生祐未、居酒屋のママの元夫を演じた三浦友和、共同脚本とプロデュースを担当した高崎卓馬、製作の柳井康治も登壇した。
(c) 2023 MASTER MIND Ltd.
ヨッシ@ミモザがゆれる @going49
なにこれ https://t.co/3sxopvu2V9