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キアヌ・リーヴス主演作「ジョン・ウィック」シリーズの監督をはじめ、大作アクション映画に数多く関わってきたスタエルスキ。20代の頃からスタントマンやアクションコーディネーターとしてキャリアを積み、「マトリックス」シリーズでリーヴス演じる主人公ネオのスタントダブルを務めたことでも知られる。日本の映画、マンガ、アニメ、ゲームなどのカルチャーを深く愛し、9月22日に公開を控える最新作「ジョン・ウィック:コンセクエンス」の一部では日本で撮影を行った。また最近は、「サムライチャンプルー」「カウボーイビバップ」などを手がけたアニメーション監督・渡辺信一郎が制作中の「ラザロ」のアクションシーンにも携わっている。
まずスタエルスキは、アメリカの映画業界の強みを「Adaptability(適応性)に優れている」と述べ、「国際的な市場に出るためには、昔のやり方にとらわれないことが必要」だと強調。そして言語関係なく受け入れられやすいジャンルとしてホラーやアクションを挙げたのち、「視覚的に魅せられる作品が国際的に響きやすい。5ページもある長いセリフを言わせるより、ちょっと眉を上げるだけのほうが感情がよく伝わります。色彩、セット、アクション、衣装など、セリフ以外の部分でアピールすることを意識しています」と話し、「ジョン・ウィック」に関しても「キアヌのセリフは4行か5行ぐらい(笑)」と付け加えた。
日本の黒澤明作品など“侍映画”に慣れ親しんできたスタエルスキは、作中で描かれるロマンチシズムや誇りに胸を打たれたという。かつてジョン・フォードが西部劇で描かれる伝統や精神性を“Ceremony”と表現したことになぞらえ、「儀式的な要素……例えばお辞儀をしたり、誓いを立てるといったものは日本をイメージする人が多いはず。日本の伝統には作品やキャラクターを作り上げるうえでアピールできる要素があるのです」と日本独自のしきたりが作中でも生かせることを指摘。またスタエルスキは「自分の物語のつづり方は日本のマンガやアニメに近いと思っています」と切り出し、「日本の作品が魅力的なのはストーリーや発想、興味深いキャラ。そしてハリウッド式の三幕構成で脚本を作っていないのが面白くて、僕の趣向にすごく合っている」と続ける。クエンティン・タランティーノの「キル・ビル」もアジア的なストーリーテリングだったと言及し、そういった影響もあって「ジョン・ウィック」の1作目はあえてシンプルな二幕構成にしたと明かす。「自分の作品ではあまりセリフを使いません。ジョンのバックグラウンドにいろいろ肉付けできるけど、あえてしないのもアニメ的だと思います」と日本のストーリー構造に魅力を感じていることを伝えた。
スタエルスキいわく、フィルムメーカーとして大事なことは「アスパイア(憧れ)とインスパイア(ひらめき)」。「機動警察パトレイバー」「攻殻機動隊」「AKIRA」などから受けたインスピレーションをいかに反映させるか考えながら制作していると述べ、「西部劇を観て育った僕らは、その枠から外にはみ出して『ジョン・ウィック』を作りました」と従来の表現にこだわらないことの大切さを改めて主張する。「皆さんもすでにある形式からはみ出ることが重要なのでは。日本にはすでに大勢を惹き付けるカルチャーが備わっているので、いかに人々に響くように膨らませられるか」とクリエイターたちに呼びかけ、「『ジョン・ウィック:コンセクエンス』でも真田広之さんやリナ・サワヤマさんが日本に根付く文化を見事にブレンドさせてくれました」と感謝を示した。
アメリカをはじめ世界各地でアニメやマンガの日本文化が浸透している現在、若い世代は物心ついたときから海外のカルチャーに触れている。スタエルスキは、人々の感覚が変わってきているからこそ、肝心なのは「メッセージを何で包むか」だと述べ、「『ロミオとジュリエット』を普通に見せても今の感覚では飽きてしまいますが、例えばアクション映画だけどコアに『ロミオとジュリエット』があるなら響くかもしれない。ラッピングの変化が必要なのです」と説明。「最新作は武士道の『葉隠』を意識して作りました。“戦うものは戦いを通して互いを知ることができる”という意味を見出し、ドニー・イェンさんや真田広之さんの演じるキャラクターを作り上げ、そこから生まれる友情を描いています。ストーリーのアイデアをいかに新しいもので包むか、それこそが僕の仕事だと思います」と真摯に語る。
またスタエルスキは、日本の映像業界が常に頭を悩ませる“実写化”の難しさにも言及。「原作をそのまま映像として翻訳するのでは絶対に成立しません」と前置きし、「なぜ自分がそれを好きなのか考えるべき。映画は視覚的なので、その原作をいくら好きでもそのまま映像化はできませんし、最高の脚本を書いてもそれだけで観客は映画館に足を運ばない。それにいくらわかりやすく作っても、理解すること自体はエンタテインメントではありません。だからこそ作り手のフィルタが必要。なぜ自分が好きかを考え、ビジョンを作品に落とし込む必要があるのです」と考えをめぐらせた。
なおこのイベントは、日本のコンテンツ業界を支援する団体・映像産業振興機構(VIPO)の企画として開催された。
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