映画「
1923年9月1日に発生した関東大震災から6日後、千葉・福田村で9人の行商団員が殺された事件を題材とする本作。震災時に各地で起きた朝鮮人虐殺、そして朝鮮人に限らず“善良な人々”が虐殺された日本の負の歴史を描き出す。木竜は、孤軍奮闘する若手記者・恩田楓を演じた。
ドキュメンタリー監督である森の劇映画デビュー作となる本作。森は「そもそも学生の頃は劇映画を撮っていました。ドラマを作る会社かと思い入社したら、そこはドキュメンタリーの会社で、結局30年間テレビで撮り続けました。テレビドキュメンタリーのつもりでオウム真理教の施設を取材したら、テレビでは放送できないと言われ、それが最初のドキュメンタリー映画になりました」と自身のキャリアを振り返る。そして「ずっとドラマを撮りたいと思っていたので、(本作は)劇的なチェンジではありませんでした。特に今回の題材はドラマに向いていると思いました」と説明した。
「なぜ福田村事件に興味を持ったのか?」という質問に対して、森は「虐殺の跡地をいくつも訪れましたが、とても穏やかな普通の人たちがある条件のもとでは残虐な振る舞いをする。人間とはそういう存在だと、今は思っています。日本はそのような歴史を繰り返していますが、それを軽視する傾向が続いています。ならば映画にしようと考えました」と回答する。
役作りについて木竜は「当時の新聞記者や、新聞社で働いている方の記述がある本を読みました。その時代の女性の感覚や気持ちは想像で補いつつ、現場で森さんに記者としての話し方や、熱量に足りてないところがないかを相談しました」と述懐。また「政治色の強い作品に出演することに対してリスクを感じたか?」という質問が投げかけられると、彼女は「リスクは感じませんでした。純粋に脚本が面白かったので、俳優として参加できることをうれしく思いましたし、全力で向かっていくことができたと思っています」と答えた。
木竜は「どんな出来事もそうですが、(演じていて)実際に体感した人たちの本当の気持ちには絶対になれないと思っています。どこまで近づけるのかということを、意識して臨んでいました。もしかしたら追体験と言えるのか、でもきっと私が感じた痛みでは語れない感覚を(実際の福田村事件を目撃した)皆さんは感じたはず。そこは、俳優としていい体験ができたと思っています」と撮影を回想する。
森は「日本人の集団性の高さはとても強い。個が弱く、集団性が高いと思います。組織の団結力は強いので、高度経済成長などポジティブに向かうこともあります。ただ、ネガティブな方向に向かったら、また同じような大きな過ちが起こってしまうのではと思っています。もちろん100年前はメディアと言えば新聞しかなく、識字率も高くありませんでした。その時代に比べて今は人々にリテラシーが身につきましたが、ネットを含めてメディアが進化してしまいプラスマイナス0だと思っています。福田村事件のような規模ではなくとも、同じようなことが起きてしまうのでは。そう意味では今も同じ状況だと思っています」と自身の見解を伝えた。
「福田村事件」は、震災からちょうど100年を迎える9月1日に東京・テアトル新宿、ユーロスペースほか全国で公開。井浦新と田中麗奈が主演を務めた。
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mihoko imai 今井美穂子 | 芸能通訳者 @mihoko_imai
昨夜のお仕事。世界史や日本史の不勉強が祟ることなきにしもあらずなので、このような題材は非常に怖い。毎回お金をいただきながらお勉強をしているようなものです。(すみません) https://t.co/BsPbvnwIEI