柳田國男による説話集「遠野物語」から着想を得た本作は、18世紀後半、大飢饉に襲われた東北の村を舞台とした物語。少女・凛は禁じられた山奥に足を踏み入れ、伝説の存在として恐れられる“山男”と出会う。
キャラクター場面写真には、山田扮する凛の鋭い視線を捉えたものから、
また本作を鑑賞した小林は「この新しい昔話は、私たちがすっかり忘れてしまったような、それでいて心の奥底に生き続ける、静かな何かを呼び覚ましてくれる」、奈良は「観る者は五感を総動員して舞台に近づこうとするだろうが、それを阻む何かをこの物語はおしえてくれる」、今日は「かつて山が持っていた力は厳しく恐ろしい。それこそが娘が選んだ自由でもあったのだ」とコメントしている。
「山女」は明日6月30日より東京・ユーロスペース、シネスイッチ銀座ほか全国で順次ロードショー。
小林聡美(俳優)コメント
洗練された映像と音楽。生々しい人の営みと圧倒的な自然の神秘。“祈り”や“想い”の力。この新しい昔話は、私たちがすっかり忘れてしまったような、それでいて心の奥底に生き続ける、静かな何かを呼び覚ましてくれる。
奈良美智(美術作家)コメント
これは物語だ。現代社会に落ちてきた遠い昔の物語。屋根のある劇場ではなく、東北の空の下、暮らしを舞台にした物語だ。この悲しい物語はリアリズムから遠ざかり、手ごたえの無い空想世界に着地する。観る者は五感を総動員して舞台に近づこうとするだろうが、それを阻む何かをこの物語はおしえてくれる。
今日マチ子(マンガ家)コメント
日ごとに狭まっていく社会から脱出するただ一つの道。かつて山が持っていた力は厳しく恐ろしい。それこそが娘が選んだ自由でもあったのだ。
安田菜津紀(認定NPO法人Dialogue for People副代表 / フォトジャーナリスト)コメント
「穢れ」をなじる閉ざされた村で、つかの間だけでも「人間」になろうとした、凛。こうして社会は都合よく、若い女を踏みにじったり憐れんだり、気まぐれに持ち上げたり、勝手に恐れたりする。凛の生きた時代から200年が経った、今も。
畑中章宏(民俗学者)コメント
「目前の出来事」「現在の事実」を乗り越えていくため〈境界〉の向こうに踏み込んだひとりの女性。100年以上前から、いまだに解決されることのないさまざま〈問題〉を、幻想的な〈神話〉によって包み込んで展開する映像から目を離すことができない。
はらだ有彩(テキストレーター)コメント
女に生まれたから、逆らえない決まりに取り囲まれて生まれたから、人間として生きられなくても仕方ない。それは閉ざされた村にだけ、旧い時代にだけ起きる特別な諦めではない。疎外された人が役割を捨てるとき、その物語は身勝手な世界を怯えさせる。そしてこれから役割を捨てる誰かをそっと呼び寄せる。だから私たちは語るのだ。昔、あったずもなと。
児玉美月(評論家 / ライター)コメント
白の衣物に身を包んだ凛の姿は、「山女」の美しいモチーフである白いリンドウと重なり合う。
彼女もまた、自律して咲き誇ろうとしたリンドウの花だったのだ。
そこが水さえ与えられない不毛な地であるのなら、なんとしてでも生まれついたその場で咲こうとしなくていい。
凛として、その場を立ち去ってゆくひとりの女の人生がここにある。
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緋村 月 @himuralight
山田杏奈主演の「山女」キャラクター場面写真、森山未來が“山男”に変貌を遂げる(写真27枚 / コメントあり) - 映画ナタリー https://t.co/CJT71v7DvG