本作は父親の訃報を知った42歳のフリーター・陽子が、24年間帰っていなかった故郷の青森・弘前に向けてヒッチハイクで向かう物語。TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2019の脚本部門で審査員特別賞を受賞した
第25回上海国際映画祭の授賞式は中国現地時間6月17日に開催。審査員からは作品賞の講評として「この映画は、ロードムービーを創造的な方法で探求し、昨今の日本で暮らす平凡な人々の平凡な日常を描く中で、ヒロインが自分自身を発見するプロセスを目撃させます。審査員は満場一致で本作が唯一無二の作品だと評価しました」と伝えられた。室井とともに脚本賞を受賞した熊切は壇上で「このような素晴らしい賞をいただきまして、大変光栄に思います。浪子想と言いますのは、私、熊切和嘉と妻の熊切智子の共同のペンネームでして、今回もちろん室井さんの脚本が素晴らしかったのですが、そこからさらに妻の力で、主人公の女性を深く掘り下げて描けたのかなと思っています。妻にこの場を借りて、感謝をしたいと思います。ありがとうございます」と語った。
本作で初めて国際映画祭の演技賞を受賞した菊地は、授賞式直後に「油断して気を抜いていたら名前を呼ばれたので、驚きとその事実を受け入れるのに時間がかかりました。皆さんに温かく迎えていただき、女優賞、脚本賞、作品賞をいただけるとは思ってもいなかったです。役者をやっていて、心からよかったと思います。ここからの役者人生、また身が引き締まる思いです」と吐露。熊切とは2001年の「空の穴」に続くタッグで「20年前に熊切監督に拾っていただいたことも、こうしてまた新しい作品で監督に感謝できる環境に来られたことは、何よりも自分の宝物です。この作品を愛していますし、多くの方にこの作品が届くことが幸せです。審査員の方に舞台裏で『審査員みんながあなたに決めたのよ』と言われ、映画にも感動したと言っていただいた。その言葉がとてもうれしかったです」と話した。
1977年生まれ、千葉県出身の室井は大学卒業後、ENBUゼミナールにて映画監督の篠原哲雄に師事。卒業後は制作現場での下積みを経て、CM、映画などの演出に携わってきた。原案と脚本を担った「658km、陽子の旅」は母親を16年前に亡くした実体験をもとにしており、「事故があった日に、病院から電話が掛かってきました。その電話に出たのですが、そのときには『とにかく病院に来てくれ』というだけで、容体を教えてくれない訳です。なので、病院に向かいました。そのときに、母の容体のことや、これからのこと、これまでのことなどを考えて、1時間もかからない道のりがすごく長い時間に感じられて。そのときの圧倒的な時間というのを、何かドラマにできないかな、と思い、この物語になりました」と明かしている。
「658km、陽子の旅」は7月28日より東京・ユーロスペース、テアトル新宿ほか全国で順次公開。
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「658km、陽子の旅」上海映画祭で作品賞など最多3冠、菊地凛子は最優秀女優賞に輝く
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