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本作は北九州で定時制高校の教頭を務める末永周平が、病気で記憶が薄らいでいくことをきっかけに、これまでの人間関係を見つめ直す物語。第76回カンヌ国際映画祭では毎年世界の先鋭的な9作品を紹介するACID部門に約600本の応募作から選ばれ、正式出品された。
2000年に青山真治監督作「EUREKA(ユリイカ)」で訪れて以来のカンヌ国際映画祭への参加となった光石は「なんとか事務所の方々にお願いして行けることになり。2泊だけでしたけど、向こうで舞台挨拶もできて楽しかったですね。もう23年も経ってますから。様子も違うし、初めてな感じでした」と振り返る。カンヌ初参加となった二ノ宮は「映画が大好きな方しか集まらない場所。本当にたくさんの方に声をかけていただけて幸せでした」と述懐。続けて光石は「商業ベースの映画に抗うような作品が集まる部門。そこに二ノ宮監督の映画が選出されたのは本当に誇らしい思いでした。会場でも温かい拍手をいただきました」と明かし、北九州弁がカンヌで流れたことについては「お前ら(北九州弁は)わからんやろが!という思いもありましたけど」と冗談交じりに語った。
現地では「PERFECT DAYS(原題)」の役所広司、「首」の大森南朋と会う機会もあったそうで、光石は「上映が終わってから近くのホテルでお疲れの乾杯をしていたところ、ちょうど役所さんの一団がいらして。行く前にメールで『会えたらいいね』とは話してたんですけど、偶然会うことができました。次の日には大森南朋さんがホテルに来てくれて、一緒に朝ごはんを食べましたね」と回想。二ノ宮は「その朝ごはんにお誘いいただいてたんですが、(前夜に)べろべろに酔っ払ってしまって朝起きれずに……。チャンスを逃しました。本当に後悔してます。興奮して飲みすぎてしまって……」と悔しそうに話して、笑いを誘った。
俳優としても活動している二ノ宮の演出を、光石は「僕とか松重さんには遠慮もあるし、言いづらい部分もあったと思うんですけど、若い俳優さんにはものすごく寄り添って、やりやすい環境を作ってましたね。俳優ファーストで演出なさっている印象でした」と高く評価。もっとも印象に残っている場面を聞かれた二ノ宮は、光石が俳優経験のない実の父親と親子として共演したシーンを挙げ「お二人を見つめているときは、今までに一度もなかった感覚がありました」と思い入れを明かす。二ノ宮の強い要望で実現した実父の出演について、光石は「喜んでいましたね。彼にとっては祭りごとのようなこと。でも僕は恥ずかしくて、目も合わせられなかったですよ」と話した。
イベントの最後には、光石がサプライズで二ノ宮への手紙を読み上げる場面も。光石は「ご両親をロケ地にお招きしたり、完成披露試写会にお父様のスーツで登壇したり。現場で誰にでも平等に接し、真摯に向き合う姿を見たり。カンヌ映画祭の上映後、感動のあまり号泣しながら夜道を歩いたり。そんなあなたを僕は知っています。ご両親が、キャスト・スタッフが、映画が、そんなあなたを愛しています。その真面目で誠実な性格で愚直に撮り続けてください」と伝えながら、「いい話ばかりだとなんなので、最後に“パワハラ”を1つ。また俺を使えよ!」と要望する。二ノ宮は目に涙を浮かべながら、しきりに頭を下げ「ただの光石さんのファンだったところから始まって、役者もするようになって。たまたま共演させていただく機会もありました。今は同じ事務所にも入らせていただいてるんです。だから、もはやストーカーみたいな感じです(笑)。今日を迎えられて本当に幸せです」と言葉を返した。
「逃げきれた夢」は東京・新宿武蔵野館、シアター・イメージフォーラムほか全国で公開。
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