本作は善意の行動が誤解を受けて藩を追われた若侍が、やがて無頼漢(ならずもの)と呼ばれ、悲劇の道をたどる物語。追い詰められた主人公が最後に圧巻の大立ち回りを演じる展開は、のちの時代劇に大きな影響を与えた記念碑的作品として知られ、“日本映画史上最高のチャンバラ映画”とも評される。“日本映画の父”と呼ばれた
当初は2021年の阪東妻三郎の生誕120年企画に向けて、35mm上映用ポジプリントからの4K修復を想定していた時代劇専門チャンネル。しかし、フィルムを管理するマツダ映画社から「倉庫にネガがある」という情報を聞きつけ、調査が行われた。かつて阪東妻三郎本人が大切に保管し、その死後、1960年代からマツダ映画社が所有していたという同フィルム。時代劇専門チャンネル、国立映画アーカイブ、IMAGICAエンタテインメントメディアサービス、マツダ映画社の立ち合いにより、フィルムが1925年製造であること、製作者による編集の痕跡があり、可燃性であることが認められ、オリジナルネガと結論付けられた。
その多くが失われている戦前の日本映画において、特に1920年代の作品のネガが発見されるのは、きわめてまれ。劇映画におけるオリジナルネガの現存は国内最古の例となる。そして阪東妻三郎が没後70年を迎える2023年の発表を目指し、IMAGICAエンタテインメントメディアサービスでの修復作業が進められた。
今回の「雄呂血<4Kデジタル修復版>」は作品全体の30%を高精細なオリジナルネガから修復。全11巻のうち冒頭部分は損傷が激しかったが、ラスト3巻の立ち回り部分は状態がよく、そのシーンのほぼすべてがオリジナルネガから復元された。これまで上映に使用されていた1960年代プリントのポジフィルムは作中4分ほどの欠落があったが、1976年に公開された「噫活弁大写真」に欠落部分が残っており、今回の修復に用いられた。上映時間は従来の75分から欠落部分の復活やフィルムのコマ送り速度の調整を経て101分に伸長。ノイズの除去はもちろんのこと、黒くつぶれていた髪の毛の陰影や目尻のしわなどが視認できるようになり、公開当時の状態に限りなく近づけられている。
音楽と活弁については「古典の再現ではなく、新たな表現を」というコンセプトが立てられた。花形演芸大賞の金賞を受賞している活動写真弁士・
テレビ初放送にあわせて、4K修復作業の舞台裏と田村一家の歴史を追った特別番組「阪妻と『雄呂血』~田村家の100年~」も放送。阪東妻三郎(本名・田村傳吉)を父に持つ俳優の
YouTubeではプロモーション映像が公開中。美しく鮮やかによみがえった「雄呂血」の修復前後の様子も確認できる。
雄呂血<4Kデジタル修復版>
時代劇専門チャンネル 2023年7月8日(土)20:00ほか
阪妻と「雄呂血」~田村家の100年~
時代劇専門チャンネル 2023年7月1日(土)22:00ほか
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史上最高のチャンバラ映画「雄呂血」4Kデジタル修復が実現、尺は75分から101分に - 映画ナタリー https://t.co/2RhfuQ9xHz