レッドカーペットの前に実施された取材では「編集ではみんなの顔を見ていたけど、カンヌで実際に会うことができてとてもうれしい」と顔をほころばせていたヴェンダース。役所について「彼の作品は、かなりの数を観た」と話し、「警官としても侍としても素晴らしい、なんという役者なんだと思っていた。役所さんと仕事するのは夢のようでした」と念願叶った思いを明かす。ほかのキャストに対しても「この作品にはスピリチュアルなレベルがあって、皆それを感じてくれていた」と厚い信頼をのぞかせる。一方、役所はヴェンダースから学んだことについて「常に楽しそうにしていたので、その姿勢がキャストを励まし、大きな演出になっていた」と振り返った。
直後に実施されたコンペティションでは、2300人以上を収容できるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレが満員に。会場に監督とキャストが現れると、観客は総立ちで迎え、約5分間におよび拍手が鳴り続ける。そして2時間5分の上映が終了すると、観客が一斉に立ち上がって約10分にわたるスタンディングオベーションが起こり、感激するヴェンダースを役所、中野、アオイ、田中が優しく包み込んだ。
上映を終え、役所は「皆さん褒めるの上手ですよね(笑)」と照れつつも「監督が言ってたんです。『褒められても自分がうまいと思わないで、けなされても自分が駄目だと思わないで、映画で語りなさい』と。まさにそうだなと。でも今日みたいな温かい拍手を受けて、ああお客さんが喜んでくれてるんだ。よかったな。と単純に思いました」とほほえむ。中野は「どういう反応が来るのかなと不安だったけど、きっと感じるものがあるんじゃないかという望みはありました。スタンディングオベーションで拍手と喝采を感じたときに確信に変わりました」と回想。田中は「映像のお仕事で(スタンディングオベーションを受けたこと)は初めてです。うれしいというよりも『役所さん、やったね!』という気持ちで、抱きつきたかったです」と主演の役所を労い、アオイは「役所さんが爆発するわけでも、変身するわけでもない映画なんですが、日常の幸せ、平和の象徴が描かれた映画が評価された、ということがとてもうれしく思いました」と締めくくった。
「PERFECT DAYS」は、日本の公共トイレに「small sanctuaries of peace and dignity(平穏と高貴さをあわせ持つ、ささやかで神聖な場所)」を見出したヴェンダースが、清掃員・平山の日々の小さな揺らぎを丁寧に紡いだ物語。役所が平山を演じ、彼のもとを突然訪れる姪に中野、平山と奇妙なつながりを持つホームレスに田中、平山の同僚清掃員のガールフレンドにアオイが扮した。麻生祐未、柄本時生、石川さゆり、三浦友和も出演している。日本での配給は未定。劇場公開などの情報は続報を待とう。
シナリオ公募ナビ @scenarionavi
ヴィム・ヴェンダース、役所広司の出演は「夢のよう」 タッグ作にカンヌの観客総立ち(映画ナタリー) https://t.co/99CHTkbNo6