阪本順治が早稲田で映画講義「逆転の発想が大事」、海外ロケでの心境変化も明かす

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早稲田大学での映画講義「マスターズ・オブ・シネマ」が本日4月22日に行われ、監督の阪本順治が参加した。

阪本順治

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「マスターズ・オブ・シネマ」の様子。左から藤井仁子、阪本順治。

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2018年に続いて2回目のゲスト登壇となる阪本。約300人の学生が参加した講義は、阪本が監督を務めた「半世界」以降5作のダイジェストの上映から始まった。担当教員の藤井仁子から、雨や雪が降るシーンが多いことを指摘されると、阪本は「物語を助けてもらえるというところもありますよね。情緒とか刹那とか。俳優の演技が第一ですが、彼らが語らずとも(思いや状況を)代弁してくれるし、スタッフも一丸となるんです。現場での緊迫感を生む効果も狙っていると思います」と述べる。また彼は「シンプルな合成をするときもありますけど、現場で安易に『あとからやるから』とは言わないですね。俳優たちは雨や雪も含めて自分たちの場面だという認識があると思うので、作り手のあきらめみたいなものが一緒に伝わると(士気に)影響する。できるだけ現場ですべてやるようにします」とこだわりを明かした。

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“演出力”について深掘りする場面では、藤井から「(撮影の前に)俳優と2人だけでじっくり話して人柄を知ってから脚本を書くと聞いたのですが」と問われ、阪本は「恒例なんですよ。マネージャーさんもなしで」と答える。その内容については「台本を真ん中に置いて場面の話を……ということはしないですね。生まれてからこれまで何があったかとか、他言はしないという約束で、人には言えないことを語ってもらう」と言い、続けて「僕も恥ずかしいことを話すことで自分のことをよく知ってもらう。そうすると、お互いにフェアな関係を作れるだけでなく、現場でも『たぶんこういうことを言っているんだな』と理解してくれる」と、演者との信頼関係を撮影前に築く重要さについて語った。また、主要キャストの登場場面については「いつ現われるか、どういうふうに現れるかっていうのはすごく考えますね」と口にし、「例えば、変わらない日常を送る人たちの中にポンっと事件を起こすことで、映画の起承転結が生まれる。小さな町に誰かが帰ってくるとか、出て行ったとか、そういうコミュニティの出入りを考えることで物語が立ち上がってくる」と、具体的な構成方法にも言及した。

講義の中盤、2019年公開の「半世界」や今年4月28日に公開される「せかいのおきく」に共通する“せかい”という言葉にちなみ、藤井は「(これまでの監督作の)セリフにもしょっちゅう出てくる『世界』という言葉の示す意味が、どこかの時点で変わったんじゃないかという印象を受けていまして。はっきり違ったのは『半世界』だというのは間違いないんですけど」と話を振る。中学生時代の同級生である39歳の男たち3人の葛藤と希望が描かれた「半世界」では、稲垣吾郎演じる製炭の職人を主人公に据えており、阪本は「(それ以前の作品では)キャラが立つというか、背景にインパクトがある人物を真ん中に置いてその人を追いかけることでストーリーが成立するようにやってきた部分はある」と分析したうえで、「『半世界』の前が『エルネスト』っていう映画で、キューバで55日間悪戦苦闘しながら撮影して。帰ってきて映画を仕上げたあと、もう少し身の丈に合った、間口は狭くても奥の深い映画を作りたいなと思ったんです」と心境の変化があったことを明かした。

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講義では学生とのQ&Aも行われた。撮影中、予定通りにいかないときや、偶然生まれたアイデアを取り入れる際の心持ちを問われた阪本は「僕はこれまでの30作品で、決められたスケジュールから1日延びたのが2回しかない」と言い、「晴れのシーンのつもりだったのに雨が降ってきたら『ラッキー』と。傘を小道具として使うことで演出の幅が広がる。逆転の発想というのが大事で、(与えられた)条件の中でいいものを撮るのがプロだと思っている」と矜持を語った。

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神戸映画資料館 @kobeplanet

早稲田大学での映画講義「マスターズ・オブ・シネマ」。聞き手は藤井仁子氏。 https://t.co/BAV6yvaoU2

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