「Winny」現場の東出昌大は常に猫背、三浦貴大は“妻”和田正人の思いにやっと気付く

「Winny」公開記念舞台挨拶が本日3月11日に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで開催され、キャストの東出昌大、三浦貴大、和田正人、監督の松本優作が登壇した。

ファイル共有ソフト“Winny”にまつわる実話をもとにした本作。ソフト開発者の金子勇が著作権法違反幇助の容疑で逮捕された経緯と、逮捕に対する不当性をめぐって弁護団と警察・検察が全面対決した裁判の行方が描かれる。金子を東出、サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光を三浦が演じ、弁護団の一員である浜崎太一に和田が扮した。

東出は「生前の金子さんを知る人で彼を悪く言う人はいない。彼自身も人を悪く言ったり、愚痴を言うことが極端に少なかったそうです。特別魅力的な実在の人物を演じられたのは幸運でした」と語り、「演じるにあたっては、彼が持っている浮遊感や、ポジティブな雰囲気を心がけました。金子さんがプログラミングに没入することで自分を表現したように、僕も自分には芝居しかないと思いながら役に臨みました」と振り返る。

三浦は「壇弁護士が現場にいらっしゃったときに金子さんの話をしていただき、法廷シーンの動きを教えてもらえたのは大きかったです。モデルとなった方にアドバイスをいただきながらやれることはなかなかなくて」と言い、「（劇中の）壇さんと金子さんの仲間というか兄弟のような雰囲気は、東出くんが本当にずっと金子さんとして現場にいてくれたからできたものです。東出くんはいつ見ても猫背で、醸し出す雰囲気が金子さんでした」と役への入り込みを称賛した。

三浦から「弁護士団を取り仕切っていた」と褒められた和田は「僕の役もモデルの方はいるんですが、お会いしていないので事前情報を得られたわけではないんです。なので僕の場合は浜崎の役割を意識して、壇先生から半歩くらい下がったところから場を見るようにしていました。浜崎のささいな一言によって、壇先生が裁判でのある行動を思い付くシーンがありましたね。あれって、仕事で悩んでいる夫が妻のささいな一言からヒントを得て乗り切るような空気感に似ていて」「時には小言を言ったり、時にはちょっと支えたりという雰囲気を意識しながら演じました」と心がけを明かす。「気付かなかった。今ありがたさを改めて実感しました」と三浦に驚かれると、和田は「さっきここ（三浦と東出）が友情がどうのこうのと言っていたので、嫉妬しました」と“妻”の顔を見せてジョークを飛ばした。

実際の事件を扱う危うさを懸念していたという松本は、「本音では公開できるかわからない、撮影にいけるかもわからないと思っていました。映画の中に出てくる方々は今も社会の中で生活されていて、映画によってその生活が大きく変わってしまうかもしれない」と慎重にことを運んだという。「それでも完成させたいと思ったのは、調べていく中で金子さんのことをよく知っていったから。有罪になったときは大々的に報じられたのに、無罪のときははるかに小さな報じられ方になっていた。いまだに彼が有罪だと思っている方もいらっしゃるでしょうし、映画を通して金子さんを知っていただきたいなと考えたんです」とまっすぐな思いを口にする。また東出も「『金子勇になれば彼の魅力は届くから、とにかく彼になろう』とそればかり考えていました」とうなずく。

最後に東出は「このイベント前に（金子勇さんの）お姉様が挨拶してくださいました。『世の中には不条理が満ちあふれていると思ってあきらめて、金子勇という人物とその物語を胸にしまっていた。このような形で表に出るのは奇跡のようだ』とおっしゃってくれて。お姉様の中にいる、1つの真実としての金子さんが映画に焼き付けられたのかなと思います」と会場へ語りかけ、イベントの幕を引いた。

「Winny」は全国で公開中。