松山ケンイチ「ロストケア」は“自分事になる”作品、長澤まさみと化学変化積み重ねる

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ロストケア」の完成披露舞台挨拶が本日2月2日に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで開催され、キャストの松山ケンイチ長澤まさみ鈴鹿央士戸田菜穂加藤菜津、監督の前田哲、原作者の葉真中顕が登壇した。

「ロストケア」完成披露舞台挨拶の様子。

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松山ケンイチ

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献身的な介護士として慕われた青年・斯波宗典が、“救い”と称して42人もの人間を殺めた事件を軸に据えた本作。松山が斯波、長澤が検事として斯波と対峙する大友秀美を演じた。10年前から前田と企画を温めてきたという松山は「形になってすごくうれしいです。お客さんの反応を見たくて、さっき一緒に(上映を)観ていました。面白くないとお客さんの頭が揺れたり動いたりするんですよね。皆さんのことを監視してたんですが、あんまり動いてなかった」「柄本(明)さんが本当にぎりぎりの演技をしているシーンで鼻をすする音が聞こえて」とほっとした表情を見せた。

前田哲

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映画化の経緯については前田が「2013年に葉真中さんの原作本が出たときに読みました。読み終わったら、松山さんからたまたま『面白い本を読んだ』と電話が来て」と説明する。対する松山が「わいが電話した? 10年前の話だからわかんなくなっちゃって」と驚くと、前田は「そうだよ」と苦笑いしつつ「葉真中さんには、やるやる詐欺をして待ってもらって。映画化の契約もしてないのに僕の情熱だけで待っていただいたんです。だから、葉真中さん今日がすごくうれしいんじゃないでしょうか」と感謝を伝えた。

長澤まさみ

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鈴鹿央士

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作品を観た感想を長澤は「斯波とお父さんのシーンはグッと来るものがありました。自分が出演していなくて(内容を)知らないシーンでは身につまされる思いになって、この映画は観るべきものだと感じました」と話し、鈴鹿は「うわべで何かを考えてしまうのはいけないなと。心の奥底に訴え掛けてくるものがあって、家族や自分だったらどうしようと考える部分もありました。僕の世代だと介護はすぐ直面する問題ではないですが、親と向き合うときは必ず来る。あなたはどうですか?と強く言われた感じがしました」と真摯に言葉を紡ぐ。

戸田菜穂

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加藤菜津

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葉真中顕

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戸田は「重たい鉛を受け取ったくらいの衝撃がありました。フィクションではありますが、(介護殺人は)日本でもずっと前から言われている問題。この映画を観てくださった方々が受け取って発信してもらいたい。1人で苦しんでいる方々がいっぱいいるので声を掛けていただきたいですし、ヤングケアラーにも光が当たるといいと心から思いました」とコメントする。加藤は「脚本を読むまでは、どんな形でも自分が自分の親を殺すということはあり得ないことだと思っていたんです。でも撮影期間中に『介護ってなんだろう』と考えて、その自信が少しなくなりました。殺人をするかもしれないと思うくらい、介護の壮絶さが描かれている作品ですから。でも一方で家族の温かさがあったり、親や周りの人を大切にしていこうと思えるようなメッセージ性の強い作品です」と語り、葉真中は「原作者としては、どんな映画になるのか楽しみな半分不安でもありますよね。でも想像を超える、素晴らしい映画になったと思いました。作者だということを忘れて観入ってしまいました。感激です」と心境を述べた。

松山ケンイチ

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関係者試写では観ておらず、先ほどの上映が初鑑賞だったという松山。その理由を尋ねられると「俳優的な目線で観る前に、お客さんがどういうふうに作品を受け取るのか。それをお客さんと共有したかったんです。なぜ10年間もやりたかったのかというと、この話が僕自身の自分事になるものだと思っているから。僕だけじゃなくてたくさんの人にとっても、いつか目の前に現れる問題となるかもしれない」「僕が斯波を通して大友に知ってほしかったもの、伝えたかったことは観客の皆さんに伝わったと思う」と回答した。

長澤まさみ

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撮影期間、松山と長澤の間に会話はなかったそう。前田が「いろんなメッセージが映画の中に入っているんですが、俳優を見てほしいですね。ただの絵空事にならない、地べたの言葉、魂の言葉としてセリフを発してくれている。長澤さん、松山さんの演技にはスタッフが震えていましたから」と迫真の現場を振り返ると、長澤も「松山さんとは初共演だったんですが、松山さんが斯波さんだと聞いたときから、きっと大丈夫だと感じました」「現場ではあまり会話せず、相手のことを知らないまま向き合えたらいいなと思っていたら、松山さんも同じように思っていたようで。化学変化やぶつかり合いをして、そのときにしか生まれない生のものを現場で日々積み重ねられました」と思いを口にする。

松山ケンイチ(左)にコメントを深掘りされて答えに悩む鈴鹿央士(右)。

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鈴鹿も現場を回想し「パソコンでキーボードを打つお芝居をしなきゃいけなかったのに、(松山と長澤の演技に)見入って圧倒されて、打つのを忘れてしまったんです。『自分、もっとがんばれよ』と毎日思っていました」と自身を叱咤。そして松山に「(同じシーンを違う角度から撮るために)カメラの切り返しがあるときに、松山さんっていろいろ計算されているんですか?」「お芝居を現場で見ていたんですが、(2回目のテイクでも)まばたきするタイミングが一緒だったりしたんです。自然とそうなるんですか?」と質問し、「計算してないです。知らなかったです……」と松山を驚かせた。

「ロストケア」は3月24日より全国ロードショー。

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(c)2023「ロストケア」製作委員会

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原作:葉真中顕『ロスト・ケア』光文社文庫

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