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本作では、羊から産まれた“羊ではない何か”をアダと名付け育てようとする夫婦が、破滅へ導かれていくさまが描かれる。ノオミ・ラパスが主演・製作総指揮を務めた。
スタジオジブリ作品や黒澤明の監督作に加え、新藤兼人の「裸の島」「鬼婆」も好きだというヨハンソン。「長編を監督したい気持ちがありました。それで自分にインスピレーションを与えてくれるもの、ビジュアル的に興味を持てる参考資料を集めてムードブックを作り始めたんです。絵画やドローイングを集める中で、自分でもドローイングを始めたんですが、そこでアダができました」と述べ、「本作のプロデューサーが、(共同で脚本を担当した)ショーンにムードブックを見せました。それをきっかけに、彼と週に1度会ってどんな作品にしようか話すことになったんです」と経緯を説明した。
アダについては「脚本段階では人間の言葉のセリフを少し入れていました。でもこの作品には猫などほかの生き物も出てくるので、アダのセリフを抑えて、観客にアダや動物たちの思いを解釈してほしいと思ったんです」とコメント。観客から「日本には妖怪のような存在があるが、(ヨハンソンの出身地である)アイスランドにもいるのでしょうか? それが着想点になったのですか?」と尋ねられると、ヨハンソンは「アイスランドの民話からインスピレーションを受けているし、要素を取り入れてもいます。ただアダのような存在はいないですね。半神、半獣というような特徴はほかの国の物語から着想しているかもしれないです」と答えた。
劇中に登場する白い霧のような描写に対して質問が飛ぶと、「タル・ベーラに師事していたんですが、彼の『ニーチェの馬』の影響を受けています。見えざる誰かの視点を入れたかった。“視線は感じるけれど、その視線の持ち主を私たちは決して見ることはできない”という形をやってみたかったんです」と意図を語った。またアダと夫婦たちの関係に触れ「家族は血でつながっている必要があるのか、何があれば家族と言えるのかを考えながら映画を作っていました。世の中では、血でつながっていない人たちも家族を形成しているわけですからね」とも述べる。
終盤に、あるミュージックビデオが映り込むことに関しては「作品を作るにあたって、どこか笑えるような瞬間を入れることが重要だと思ったんです。終始緊張感だけでいかないほうがいいと」と話し、「いつかミュージックビデオを監督したいと思っているんですが、まだ叶っていないので、映画の中でやっちゃえと思ったんですよ」とお茶目に明かして会場の笑いを誘った。
北米ではA24が配給を行った「LAMB/ラム」は全国で公開中。
※「LAMB/ラム」はR15+指定作品
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tAk @mifu75
【イベントレポート】「LAMB/ラム」監督が来日、アダ誕生のきっかけやタル・ベーラによる影響明かす https://t.co/zm7kpireds