東京・ポレポレ東中野で公開されている「
本作は安楽自ら演じる映画監督を主人公に、30歳を目前に控え映画が撮れなくなってしまった安楽が、“撮ること”を通して自らを模索する物語。実人生で直面した出来事を切り取り映画を作る安楽が、親友との喧嘩を題材にした「1人のダンス」、幼なじみでラッパーの
まず安楽は「春原さんのうた」「ケイコ 目を澄ませて」などを手がけてきた大川に編集を依頼した経緯を説明。映画の完成尺は135分だが、大川に頼む前の仮編集の時点では約3時間あり、完成が見えずに行き詰まっていたという。「スタッフから『早く映画を誰かに預けたほうがいい』と言われていたんですが、抵抗していたんです。でも、この映画のみちこに当たる人からも『任したら』と言われて。この歳でこんなに泣くか?というぐらい1人で泣きました(笑)。その次の日に大川さんとお会いしました」と振り返る。
大川は「顔が青白かったです。号泣したことを聞いてたら責任が重くなってた(笑)」と驚きつつ、3時間ある素材を観た感想を「よく、これを自分で編集してたなと思いました」と回想。安楽は1人で3カ月ほど続けた編集で自分を見ることに嫌気が差していたそうで「けっこうキツくて、自分を見ると吐き気がしていました。僕を見るのがつらかったので自分(のカット)を削ってたんです」と言う。大川は「この映画を安楽さん自身が編集するのは、鏡に映ってる自分を自分でカウンセリングするようなもの。その人の面白さや魅力に気付くのって当人だと難しい。ちょっと距離を置いて見る人がいてこそ成立する。だから、この映画は絶対に私が編集をしたほうがいいと思いました」とオファーを受けた理由を明かした。
大川は「夢半ば」の最初の印象を「ページが閉じられていないバラバラの日記」と吐露。編集するうえでシーンの入れ替えも多数行っており「私の仕事は、その日記をどういう順番で見ていくのが、出てくる人たちにとっていいか考えることでした。知らない人の日記を読むとき、その人を知ってから読んだほうが面白いページと、知らないまま読んでも面白いページってあると思うんです。『あのときの顔を知ってから、このページは読んだほうがいい』とか。『破られちゃって読めない部分もあるけど、そのあといろんなことがわかるページ』とかも。そういう意識や基準、感覚で並び変えていました」と話した。
編集過程では、終盤の重要な場面だったというプロポーズのシーンも丸々削られたことが明らかに。安楽は「ささいなことをずっと積み重ねていく日記みたいな映画ですが、退屈な時間を脚本にしながらも最後にデカいシーンを入れてたんです」と打ち明け、大川は「翌朝、お花に向かって結婚を報告する。その2人の背中がとってもよかった。2人がリアルにプロポーズのやり取りをするよりも、その背中に本当のリアリティを感じた」と語る。安楽は一度判断を持ち帰ったものの、熟考の末、最終的に大川の狙いに納得してカットを決断。「なくなったことが僕は、よかったんです。大川さんがこの映画に別の面白みを見出してくれた」と伝えた。
大川は安楽との共同作業を振り返り「安楽さんは西葛西の話をポロポロとしてくれる。昔のエピソードや先輩の話とか。そういう映画に直接関係のないようなことが参考になった。編集するうちに、出てくる人々の印象が一番変わった映画かも」「映画の安楽さんは迷ってる人だけど結局はちゃんと自分で選択する。実際の安楽さんも、すごく考えて丁寧に決断する人です」と述懐。安楽は「大川さんは、1人ひとりを大事にしてくれる。ラッパーのMEEKAEが『俺もバンドやりたかったな』と言うところ。僕も好きなんですけど、大川さんは『ここにも人生がある』と楽しんでくれて。そういうのが積み重なって、ラストにつながっていく映画です」と言葉を返した。トークの最後にはキャストの
「夢半ば」は12月2日までレイトショー公開中。現在、11月27日まで連日上映後のトークショーを予定している。登壇者は映画の公式Twitterで確認を。
安楽涼の映画作品
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安楽涼 @61_anbow
こちらはネタバレありなので鑑賞後に是非読んでみてください。今回初めて編集で入ってくれた大川景子さんとの記事です。
ちなみに僕が作った『夢半ば』ラッシュは3時間30分でした。公開してる本編は135分です。 https://t.co/P1B3bwD4KL