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水上勉によるエッセイ「土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―」を原案にした本作。人里離れた長野の山荘で実やきのこを採り、畑で育てた野菜を料理して、季節の移ろいを感じながら原稿をしたためる作家ツトムの姿が描かれる。沢田研二がツトム、松がツトムの担当編集者であり25歳下の恋人・真知子を演じた。
まず中江は「始めたときのことも撮影中のことも覚えていません(笑)。その日その日でやっていって、脚本を書き始めてから4年くらい。やっとここまでたどり着きました」と安堵の表情を見せる。松は「中江監督に声を掛けていただいて、沢田さんとご一緒できて、土井さんの料理も付いてくる。私は季節が変わるたびに山に行っておいしいものを食べる。こんな素晴らしい仕事は近年なかったと思うくらい、いいお仕事をさせていただきました」と話し、撮影現場を「静かで淡々としていました。こだわりはあっても押し付けず、みんなで『これどう?』と持ち寄るような素敵な場所でした」と振り返った。
初めて映画での料理担当を務めた土井は「何を作ろうかというより、お天道さん、時間、人といった“場”によって、自ずから献立は浮かび上がってくるものです。この時季はこれが合うだろうというものをただ湯がいたり焼くだけ」とコメント。「『早よ芋を煮えるようにしてくれ』と言ってもそれはできません」「人間の都合だけではなく、そういった時間もきちんと共有するというのが今回の映画(のテーマ)。人間の勝手にはできないという当たり前のことが今は忘れられがちですよね」と語る。
料理シーンに関して中江は「長野の白馬村で撮ったんですが、その辺りで採って来たものを土井さんに料理していただきました。ただ土井さんは1回しか作らないんです。撮影側の都合として何回分か撮りたかったんですが、土井さん曰く『料理がおいしいのは1回だけでしょ』と。その通りだと思って、覚悟を持って撮りました」と当時を回想。また中江が「沢田さんもほとんどワンテイクです。もちろんNGが出れば何度もやり直してくれるんですが、やっぱり1回目がいいんですよね。そして料理もすごくいい“役者”ですので、そこは土井さんに監督していただいたような気持ちです」とたたえると、土井は「お料理には流れがあります。物が用意されてないと滞りますから、あるべきところに醤油があり匙があり杓子があるようにしました。ツトムさんにはそれを自然体で利用してもらえるよう準備しました」と意識した点を述べた。
沢田の印象を尋ねられると、松は「さりげなく面白いお芝居をやれる方。結果としてお芝居が面白く見えた、というのとはまた違うんですよね」とその巧みさを称賛。中江は「普通は役の像があって、役者はそれに近付いていって演じることが多いと思います。でも沢田さんは自分のほうに役を引き寄せる。そして自分の中にある役を撮ればツトムになるよという感じで、ドキュメンタリーのような気持ちで撮っていきました」と述懐する。
「僕は沢田研二さんとお会いしたのかな?」と言う土井は、「現場初日の前に会食をさせていただいたんですが、彼が沢田さんなのかツトムなのかわからなくて。ほとんどものもおっしゃらないので、僕も当たり障りのないように振る舞っていました。現場に入っても沢田さんは休憩中もずっとツトムで、ツトムとしか会っていないなと思っていたんです。でも僕が撮影で最後の役割を終えて帰るときに、沢田さんが車に乗った僕を追いかけて来てくれました。『ありがとうございました』ときちっと言っていただいて、そのときに初めて沢田研二さんと会ったんじゃないかと思ったんです」とエピソードを披露した。
「土を喰らう十二ヵ月」は全国で公開中。
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