セザール賞で最多7冠「幻滅」来年公開、19世紀フランスのメディアを鋭く描く

第47回セザール賞で作品賞など最多7冠に輝いたフランス映画「Illusions perdues」が「幻滅」の邦題で2023年に全国にて公開される。

小説家オノレ・ド・バルザックの「幻滅 ― メディア戦記」を実写化した本作は、現代でいうフェイクニュースやステルスマーケティングが横行していた19世紀フランスのメディアの状況を鋭く描く社会派ドラマ。恐怖政治の時代が終わった19世紀前半のフランスでは宮廷貴族が復活し、自由と享楽的な生活を謳歌していた。文学を愛し、詩人として成功することを夢見る田舎の純朴な青年リュシアンは、彼を熱烈に愛する貴族の人妻ルイーズと駆け落ち同然で憧れのパリにやってくる。だが世間知らずで無作法なため、社交界で笑い者にされるリュシアン。そして生活のため新聞記者として働くようになった彼は、金のために魂を売る同僚たちに感化され、当初の目的を忘れて欲と虚飾と快楽にまみれた世界に身を投じていく。

リュシアンを演じたのは「Summer of 85」のバンジャマン・ヴォワザン。リュシアンの先輩として彼を教育するジャーナリストに「アマンダと僕」のヴァンサン・ラコスト、私欲にまみれた人々のなかで唯一、誠実にリュシアンを見守る作家・ナタンにグザヴィエ・ドランが扮した。そのほか、セシル・ド・フランス、サロメ・ドゥヴェル、ジェラール・ドパルデュー、ジャンヌ・バリバール、ジャン＝フランソワ・ステヴナンらも出演。「偉大なるマルグリット」のグザヴィエ・ジャノリが監督を務めた。

ジャノリは「私はとても肉体的な感覚や刺激を映画に持ち込みたかった。サロンの人々の動き、パリの異なるエリアの大衆の猥雑とした雰囲気、あるいは時代が移り変わっていくそのスピード、そういったダイナミックなムーブメントを生み出しながら、ここに登場する人々の人生、悲劇と喜劇を結び付けたいと思ったのです」と語っている。

※「幻滅」はR15+指定作品