ジュリー・テイモアが行定勲とトーク「観客の理解する力を信用すればいい」

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ジュリー・テイモア行定勲のトークショーが、本日11月1日に東京のmicro FOOD & IDEA MARKETで行われた。

左から行定勲、ジュリー・テイモア。

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ジュリー・テイモア

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第35回東京国際映画祭と国際交流基金(JF)の共催プログラムの一環である「交流ラウンジ」として開催された本イベント。舞台「ライオンキング」の演出や、映画「フリーダ」などで知られ、本映画祭のコンペティション部門・審査委員長を務めるテイモアは「日本に来て、皆さんとお話しできることをとてもうれしく思います」と笑みをこぼす。

行定勲

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テイモアの監督作「グロリアス 世界を動かした女たち」に感銘を受けたという行定は「1人の女性解放活動家の伝記映画なんだろうと思って観始めたんですが、テイモアさんが使っている手法というのはそういったものではなくて。心の旅と受け止めました」と言い、「4つの時代を生きる1人の女性がバスに乗って旅をし、自問自答している。ちょっと演劇的であるなと思いました。誰かを語る、誰かの人生を具現化していくときに、バスというものを考え付くかどうか。この発明が、観客にとってものすごく助けになっていると思います」と分析する。テイモアは「あの映画は1人の女性の80年を描いていますが、順序立てて時系列通りに追っているわけではないんです」と述べ、「演劇、映画を作るとき、核になるもの、ストーリーのイデオグラフはなんなのか?を考えます。『グロリアス 世界を動かした女たち』の場合は、イメージを集約するとロードムービーだよねと。そうやって原理原則を見つけて、映画に型を与えるんです。舞台『ライオンキング』のイデオグラフはサークルでした」と振り返る。

テイモアは「あのバスはどこかの時代に根ざしたものではなく、ちょっと離れたところにあるんです」「バスのシーンは白黒で描いて、そのほかのストーリーはカラー。観客はバスのシーンだけ毛色が違うということがわかるんです」とコメント。行定は「映画って時系列というものにものすごくとらわれている。一方で演劇の場合はシークエンスごとを解釈で埋める自由度がある。演劇でしかできないこと、映画でしかできないことを区別しがちですけど、テイモアさんは演劇で表現しているものを映像としてどう具現化するかということをやっている。軽々と越境しているので、僕からすると目から鱗というか。芸術を作っているんだなと感じます」と言及した。

左から行定勲、ジュリー・テイモア。

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続いて行定は「『解釈を委ねる』という言葉がありますが、解釈を手放しても美しい、楽しいと思えるもの、映画はそういうものの集合体であるべきだと思っているんです。でもそういうことをすると、わかりにくい、理解できないという言葉が付きまとう。テイモアさんはそこに対して勇敢に立ち向かっているというか、相手にしていないのかもしれないですけど(笑)。自分のやりたい表現はこれだ!と。でも、そうであっても、ちゃんと理解に届くものになっているのがすごい」とたたえる。

左から行定勲、ジュリー・テイモア。

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テイモアは「作り手が観客の理解に近付こうとする必要はないと思うんです。プロデューサーや、お金を持ってくる人よりよっぽど、観客は理解してくれる(笑)」と語り、「観客の理解する力を信用すればいいんです。『ライオンキング』の物語はシンプルですが、芸術的に語っています。ディズニーの偉い人が『(観客は)ストーリーを追えるかな?』と聞いてきたことがありましたが、『わかりますよ』と答えました。特に日本は洗練されたアート映画が生まれてきた土壌がある。観客に伝わると思います」と述懐した。

なおこのトークショーの模様は後日、東京国際映画祭のYouTubeチャンネルにて公開される。

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