映画界の表舞台と裏側で活躍する女性たちに光を当てることを目的とし、グローバルラグジュアリーグループのケリングが2015年にカンヌ国際映画祭で発足させたプログラム「ウーマン・イン・モーション」。東京国際映画祭では2019年に次ぎ2回目のイベント開催となる。今回は「
2018年に「万引き家族」でカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞したのち、フランスと韓国での撮影を経験した是枝。「どちらも働き方改革が非常に進んでいる国。フランスは8時間労働が原則で、韓国も週の労働上限が52時間と決まっている。男女問わず働く人の環境が整えられていました」と日本との相違点に触れ、「自分の現場をどう改善していくかが課題になりました」と振り返る。
松岡からは、例えとして「2週間や10日間で映画1本を撮影することもあります。実際に経験した身としては、みんなと短期間で集中して走り抜けた実感も。悪いことばかりではないと思いますか?」と質問が。是枝は共感しつつ、「でも何かが犠牲になるのは看過できない。海外でもきちんと休みを取って撮影したけど一体感がなかったわけではなくて。一体感とか精神論みたいなものは、僕らの世代が引きずっていることなのかも」と答える。「次の世代が働く場所として環境を整えていかなければ。そんな年齢になってしまったので」と使命感をのぞかせる是枝に、松岡は「年齢を問わず、私にも背負わせてください!」と挙手。「『若い世代が生意気に』なんて言われますが、もう27歳ですから。私たち世代がそういう発言をしても驚かれない世界になってほしい」と真摯に語った。
また松岡は、日本では女優が「清楚」「色っぽい」といった言葉で表現されることに疑問を呈する。「だから以前は『俳優』と名乗りたかったんです。でも『万引き家族』で樹木希林さん、安藤サクラさんとご一緒して“女優”になりたいと思いました。“女優”が麗しい褒め言葉のようなイメージじゃなくなったんです」と語る一方で、「イメージに当てはまらないと『女優さんらしくない』と言われてしまう」と吐露。是枝は、社会への影響に自覚的なフランスの女優たちを例に挙げながら「清楚さや美しさで女性を捉えるのは日本の遅れているところ。そんなのはみ出していいと思うよ」と松岡に声を掛ける。
世界的に広まった「#MeToo運動」とも相まって、日本でも今まで沈黙されてきた被害に声を上げるケースが増えてきた。是枝は「声を上げた人が不利益を被らないためのサポートが足りていない」と指摘し、「自分の現場でもリスペクトトレーニングの実施や、インティマシーコーディネーターに感情に負荷の掛かるシーンをチェックしてもらうなど、いい現場作りを検証しています」と取り組みに言及する。「万引き家族」についても、当時の撮影で改善できたことはあったか、どうケアすべきだったかインティマシーコーディネーターにアドバイスを求めたという。松岡は「センシティブなシーンって肌を出すことだけじゃない」と役者としての心境を口にし、「心を使うお芝居だから、心を壊しても仕方ないとずっと思っていました。でも是枝監督の現場では気持ちの浮き沈みがありませんでした。すべての現場もそうなれば」と期待を伝えた。
改革の過渡期とも言える現在。松岡は「喧嘩じゃなくて話し合いができて、お互い耳を傾けられる映画界であってほしい。自分もそうでありたい」と切実に訴える。是枝は「若い役者が違和感も含めて考えを話せるようになってきたのは素晴らしいこと。ぜひ応援していただきたい。映画を観に来ていただけることが一番の応援です」と呼びかけた。
是枝裕和が総合演出・監督・脚本を担当し、松岡が出演したNetflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」は2023年1月12日に配信開始。
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"Women in motion" event at the 35th Tokyo International Film Festival at TOHO Cinemas Hibiya on 31 Oct 2022 - Koreeda Hirokazu & Matsuoka Mayu
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