第35回東京国際映画祭コンペティション部門に出品されている「
本作は妻の浮気を知っても、怒ることも言い出すこともできないフリーライター・市川茂巳の物語。稲垣が茂巳を演じているほか、茂巳の妻で小説家と浮気する編集者の紗衣に中村ゆり、茂巳と文学賞の授賞式で出会う高校生作家・久保留亜に玉城ティナが扮している。
「愛がなんだ」「街の上で」で知られる今泉は稲垣に当て書きする形でオリジナル脚本を執筆した。稲垣が最初に脚本を読んだ印象を「今泉監督らしさが出ていて、主人公からも僕をイメージして書いてくださったんだと伝わってきました」と話すと、MCは「(茂巳が)吾郎さんっぽいと思った方?」と会場に質問。観客の多くが挙手し、稲垣も「茂巳が(スクリーンから)出てきて、しゃべってる感じですよね」とほほえむ。観客から役作りについて問われると「ここまで役作りをしない役ってないんじゃないかな。僕が言いそうな言葉、心の中を監督が見透かしているかのような脚本でした。パブリックイメージに寄せて当て書きすることはあると思うんですけど、この映画は本当に僕の素。自然に佇んでいれば、茂巳として存在できると思っていました」と振り返る。
今泉は脚本の執筆を「稲垣さんには喜怒哀楽が激しくなくて穏やかな印象があった。今回の主人公は妻が浮気していても感情が動かなかったことに悩む人。そういうことも理解して演じてくれるんじゃないかと思って書いていました」と述懐。茂巳の人物造形に、稲垣も「すごく理解ができる。もし僕が結婚していて、妻の浮気を知ったとしたらショックはショックでしょうけど、その場でうまく感情表現ができない。『これぐらい怒らなきゃいけない、これぐらい落ち込まなきゃいけない』という基準があって、そこに達していないといけないのかなと思う部分はあると思います」と理解を示す。さらに「登場人物の価値観はそれぞれあるんですけど、みんなが幸せになろうとしていて、愛する人にも幸せになってもらいたいと思ってる。自分で言うのもなんですが、そこがチャーミングにかわいらしく感じられる作品」と続けた。
MCが今泉作品における自然体で印象に残るセリフの魅力を尋ねると、今泉は「映画のセリフって決めゼリフにしてしまうと現実世界から離れてしまうので、普段使っている言葉の中で書こうとはしています。ただ今回はライターや小説家の話でもあるので、しゃべり言葉と文語的な表現が混ざっていても成立するのかなと思っていました。稲垣さんが話すことで、そういう言葉でも浮かない。実際に話していそうな言葉に見えてくるだろうと思っていました」と回答。また「稲垣さんはSMAPの活動をはじめ、自分が想像できないようなたくさんの信頼や期待を背負ってきた方。現場で見ていても、この映画のための準備の時間じゃなくて、稲垣さんの人生も芝居に乗っかっている気がして、言葉の重みを感じるシーンがいくつもあったと思います」と話す。稲垣も現場での経験を「今泉監督の作品は、俳優さんたちが自然におしゃべりしてますよね。そのような今泉組のお芝居のスタイルに自分をチューニングしていくことはしていました。俳優として最高の体験でしたね」と回想する。
最後に今泉は劇中で描かれる浮気や不倫について「大前提はよくないことですけど、浮気や不倫はその時間が『楽しいもの』だからよくないとされている気がしていて。浮気相手の純粋な片思いが絶対悪で感情がないものにされることに対して、そんな簡単なことなのかなと思ってしまう部分がある。現実世界で『いい』『悪い』と設定されていること。そういうことを疑おうとした作品です」と語る。さらに「今は、みんなが共感できる感情は映画の主題になりやすい。この映画はほかの人には理解されないかもしれない小さな悩みが主題。世界には戦争があったり、いろんな問題があって、それと自分の悩みを比べて『こんなちっぽけなことで悩むなんて』と思う必要は全然なくて、どんな小さな悩みでも亡くなってしまう人はいる。だから1つの悩みを大切に、大事にしたいと思っていました」と作品の根底にある思いを明かした。
「窓辺にて」は10月29日に東京・丸の内TOEI、ヒューマントラストシネマ有楽町でも上映。11月4日より全国で一般公開される。
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