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本作は日本各地の廃墟を舞台に、災いのもととなる“扉”を閉めていく旅をする少女・岩戸鈴芽(すずめ)の解放と成長を描いたアニメーション。会見には監督の
作品にちなみステージのスクリーンには扉が設置され、すずめ役の原を筆頭に登壇者たちが続々と姿を現す。最後に登場した新海は「つい最近まで作っていたので、そのまま完成報告会見という連続感の中にいます。気を失った隙に時間が経っていた感じ。今日皆さんに観ていただいたら終わったと思えるのかなと」と心境を吐露。物語の着想は「天気の子」のプロモーションで全国各地を巡ったことだといい、「僕は団塊ジュニア世代なので、人が増えていったときの華やかな記憶もあるんですが、現在は人が少なくなった限界集落のような場所が増えた実感があります。人がいなくなっていったときに人は何をするのか、このままどうやって終わっていくんだろうと思うことが増えたんです。日本各地で人の消えてしまった場所を悼むキャラクターを作れないかと思ったのが最初のアイデアです」と明かした。
新海が企画書を書き始めたのは2020年1月で、新型コロナウイルスが日本でまん延する直前。映画でも扱われている“災い”について新海は「その後起こった戦争も含めて、僕たちを不自由な場所に閉じ込めてしまうものという感覚が強くあります。それが椅子に閉じ込められてしまう(松村演じる)草太というキャラクターにつながっています」と述べる。また、映画の制作には何百人というスタッフが関わっていることを伝え、「自分で言うことではないですけど、ディズニーの影響を受けて始まった日本のアニメーションの1つの到達点になったと思います」と自信をのぞかせた。
昨日10月24日に作品を観たという原は「言葉にできないくらい素晴らしくて。寝る間を惜しんで音楽や映像を作ってくださったスタッフの皆さんと(今日は)登壇したかったです。熱意を大画面・大音量で感じてもらいたいです」と思い入れたっぷりにコメント。同じく昨日映画を鑑賞した松村は「魅力的なシーンを挙げていったらきりがないんですが、何度も笑って、何度も涙が出てきました。自分はこういうことを面白いと思うのか、こんなことに救われるのかと、幅を感じさせてもらえる作品で、映画を観ているんですが自分を見ているような不思議な感覚でした」と感想を語る。
すずめの叔母である岩戸環の同僚・岡部稔役で出演した染谷、神戸のスナックのママ・二ノ宮ルミを演じた伊藤は、本日の会見前に映画を鑑賞した。染谷は「胸に突き刺さりすぎて帰ろうかなと思っています」と冗談を交えつつ、「キャラクターと一緒に旅をしている気持ちになりました。最後はこの愛おしい人たちをもっと見守っていたいと思いながら、後ろ髪を引かれて終わっていきました」と述懐。伊藤は「観てるときに知らないうちに前のめりになっていることに気が付いて、『背もたれに背を付けなきゃ!』みたいな(笑)。笑えるところがたくさんあって、私は新幹線のシーンがすごく好きです。すずめちゃんがどんどん成長していくので応援したくなりました」と笑顔で話した。
新海は原、松村とのアフレコを「サマーキャンプみたいな時間でしたよね」と振り返り、「2人にとっては楽しいだけの時間ではなかったと思いますけど、声によって1枚1枚の画が鮮やかに色付いていく感覚でした」と充実感をにじませる。そんな収録を原は「なんて幸せな時間だったんだろうと。シーンごとに新海監督から『菜乃華さん素敵でした。ありがとう』と言葉をいただけました」としみじみ回想。松村が「誤解がないように伝わってほしいんですけど、監督が僕たちを楽器とおっしゃってくれたことがありました。僕が演奏することで草太が完成すると」と言うと、新海は「北斗くんは途中で気付きと言いますか、切り替えみたいなものがあったと思います。映画のために自分のすべてを委ねるんだと思ってくれた瞬間がある気がして。そこからより草太になっていきました」と松村への感謝を口にした。
「君の名は。」「天気の子」に続き、新海とRADWIMPSがタッグを組むのは3回目。新海は書き終わった脚本をまず野田に見せたそうで、「洋次郎さんに送ると音楽の形で感想が戻ってくるんです」とユニークなやり取りを明かす。野田は制作期間を振り返りながら「監督の背中が戦っている勇者のように見えて、この人は本当に振り絞って映画を作っているんだなって。日本のアニメーションのど真ん中に作品を届けるんだという信念を感じました」と新海への尊敬の念をあらわに。また、2人が「新しい要素が欲しい」と感じていたことから、今回は陣内も音楽制作に加わった。陣内は「すでに2作作っているところに入るのは緊張感がありつつ、今まで自分が関わってきた作品ともテイストが違ったので、よく自分に声を掛けていただいたなという(笑)。でもアクション要素などがある劇場映画の体験として、自分にもできることがあるんじゃないかと思い皆さん(新海や野田)にお会いしました」と当時の気持ちを伝える。
会見の終盤、原は「13歳のときに初めて『君の名は。』を観て、新海監督の作品をリアルタイムで観られる時代に生まれてきてよかったと友達に言っていました。まさかその6年後に自分が作品に携われるとは思っていなかったです。こんなことがあっていいんだと思うくらいに大切な作品。明日への活力になるような、今ある大事なものに目を向けることができるような映画です」と真摯に述べる。そして新海は「自分たちがどういう映画を作ることができたのか、それを(観客が)教えてくれるのがこれから。もしかしたら日本で一番面白い映画ができたかもしれない……わからないけど(笑)。この作品をよろしくお願いします」とメッセージを送った。
「すずめの戸締まり」は11月11日より全国でロードショー。
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