PFFアワード栄冠は男2人の奇跡的な衝突描く「J005311」、審査員満場一致で決定

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第44回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)のコンペティション、PFFアワード2022の表彰式が本日9月22日に東京のコートヤード・マリオット銀座東武ホテルで開催。河野宏紀が監督、野村一瑛が主演を務めた「J005311」がグランプリに輝いた。

PFFアワード2022でグランプリを獲得した「J005311」監督の河野宏紀(中央)、主演の野村一瑛(右)。審査員を務めた三島有紀子(左)。

PFFアワード2022でグランプリを獲得した「J005311」監督の河野宏紀(中央)、主演の野村一瑛(右)。審査員を務めた三島有紀子(左)。

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映画監督の登竜門として知られるPFFアワードは1年以内に完成した自主制作映画であれば、年齢、性別、国籍、上映時間、ジャンルを問わないコンペティションだ。今年は520本の応募作品から16本が入選。グランプリほか各賞を選ぶ最終審査員には、映画監督の三島有紀子菊地健雄、浪曲師の玉川奈々福、俳優のとよた真帆光石研が名を連ねた。

「J005311」

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三島有紀子

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「J005311」は生きることに絶望したサラリーマンと、同じように人生をあきらめた青年の重苦しい旅路を描いたロードムービー。現在26歳の河野は約5年前から俳優として活動を始め、養成所の同期である野村とともに映画を構想した。プレゼンターを務めた三島は、審査員の満場一致でグランプリに決まったことを報告し「作らないと次に進めない作品が、きっとどの監督にもある。この作品こそが魂の映画。河野監督の絶対的に人間に寄り添うという優しさがあふれている」と紹介。ラストシーンのある描写に言及し「そのあるカットを観たとき私は『この世界に生きていてよかった』と思えた。優しさで打ち負かす映画。生んでくれてありがとうございます」とたたえた。

河野宏紀

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河野は「役者でも人生でもどん底な自分たち2人に光を当てたかった。自分自身たちを救いたいという思いがあった。そういう映画を評価してくださった皆さんには本当に感謝しています」とコメント。野村も河野に対し「実際に生きてきた人生で一番救ってくれた人。そういう人の誠実さがこの映画に表現されているんじゃないかと思っています。おめでとうございます」と思いを伝えた。「J005311」のタイトルは、2019年4月に発見された新種の天体の名前に由来。河野は「すでに死んでいる、もう光っていない星が2つあって、その2つが奇跡と呼ばれる確率で衝突したら再び光り出した。その星の名前を人に当てはめました」と明かした。

「スケアリーフレンド」

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PFFアワード2022で準グランプリと観客賞を獲得した「スケアリーフレンド」監督の峰尾宝(右)と高橋直広(中央左)、主演の峰尾桜(中央右)。審査員を務めた菊地健雄(左)。

PFFアワード2022で準グランプリと観客賞を獲得した「スケアリーフレンド」監督の峰尾宝(右)と高橋直広(中央左)、主演の峰尾桜(中央右)。審査員を務めた菊地健雄(左)。[拡大]

峰尾宝と高橋直広が共同で監督を務めた「スケアリーフレンド」は、準グランプリと観客賞の2冠。自作のぬいぐるみが友達の少女・ぬいこや自転車で人を轢き殺すとうわさの殺人鬼・ヤバチャリらが登場し、独自の世界観で紡ぐ「友達」をめぐる物語だ。2人は監督のほか、脚本・編集・音楽・撮影・美術・声優・出演などを分担して兼任。峰尾宝の妹で撮影当時は小学生だったという峰尾桜がぬいこ役で主演を務めている。菊地は「映画を作る楽しさ、喜びにあふれている作品」「主人公ぬいこさんのまなざしがとても素敵」と述べつつ、「ストーリーも最後までどこにいくのかわからない。手作り感がある一方で、カット割りやカメラワークなどにもすごくこだわっている。技術的な達成という意味でも群を抜いていると思った」と評した。そのほかの受賞結果は下記の通り。

「Lock Up and Down」

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続く総評で三島は「映画って本当に自由だなと思わせてもらえた幸せな時間でした。この言葉が浮かんだ理由の1つは、何か自由じゃない、でも自由になりたいという人が自由を求めている作品が多かったから」と述懐。ロックダウン下のベトナム・ハノイの街をバルコニーから見下ろす日々を記録した「Lock Up and Down」に言及し「ずっと部屋の中にいた人間がバイクに乗って、風を切りながら走っていく主観のカット。私が観たかったのは河野監督の『優しさ』と、この『自由』だったんだと思いました」と話す。さらに「『ふちしすこ』の物語を語らない覚悟という自由。『瀉血』の自分はこう撮りたいねん!という素直な表現の自由。映画の中では、みんなが自由になれる」と審査を振り返る。

青山真治(撮影:池田正之)

青山真治(撮影:池田正之)[拡大]

最後に2022年3月に死去し、PFFで追悼特集が行われた青山真治から言われたという「生きていれば、何かいいことも嫌なこともある。でも、ほっといても俺たちはまた作る」という言葉を紹介。三島は「この『俺たち』は、映画に関わるすべての人のことだと思っています。映画を撮る人、映画に出る人、俳優を育てる皆さん、映画祭をされる皆さん。すべての人に言えること。私もがんばって作りたい。皆さんもぜひ、これからも作り続けてもらいたい」と呼びかけた。

第44回PFFは9月25日まで東京・国立映画アーカイブで開催。京都・京都文化博物館でも11月19日から27日にかけて行われる。16本の入選作品はDOKUSO映画館、U-NEXTで10月31日まで配信を実施。グランプリを受賞した「J005311」は10月24日開幕の第35回東京国際映画祭で上映される。

※高橋直広の高は、はしごだかが正式表記

PFFアワード2022 受賞結果

グランプリ

「J005311」(監督:河野宏紀)

準グランプリ

「スケアリーフレンド」(監督:峰尾宝、高橋直広)

審査員特別賞

「the Memory Lane」(監督:宇治田峻)
「MAHOROBA」(監督:鈴木竜也)
「幽霊がいる家」(監督:南香好)

エンタテインメント賞(ホリプロ賞)

「水槽」(監督:中里有希)

映画ファン賞(ぴあニスト賞)

「瀉血」(監督:金子優太)

観客賞

「スケアリーフレンド」(監督:峰尾宝、高橋直広)

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