京都造形芸術大学の卒制「雨の方舟」劇場上映、存在と滅びゆく文化を描く幻想的現代劇

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京都造形芸術大学の2019年度卒業制作作品として制作された「雨の方舟」が、7月30日より東京の池袋シネマ・ロサで上映される。

「雨の方舟」

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「雨の方舟」ビジュアル

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本作は、“存在”と“滅びゆく文化”が描かれる幻想的現代劇。森でさまよい、ある家で目を覚ました女性・塔子は、その家で自給自足の生活をしている4人の男女とともに暮らすようになる。そしてあるとき、不思議な出来事が起こり始める。

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監督は、これが初の長編劇場公開作となる瀬浪歌央。主演とプロデューサーを大塚菜々穂が務め、松嵜翔平川島千京上原優人池田きくの中田茉奈実も出演した。

YouTubeでは予告編が公開中だ。瀬浪と大塚のメッセージ、井浦新白石和彌風間志織金子雅和から届いた応援コメントは下記の通り。

瀬浪歌央 コメント

今の私に言えることは、人は絶対を兼ね備えた、滅びゆく文化であるということです。気づくことと気づかないこと。この映画を制作していて、ふっと、どちらが幸せなのかと考えることが多くなりました。気づかない方が幸せなのではないかと。けれど私は、気づかない人間には到底なれないのです。みなさんにも、そんな答えのないことを一度考えてみていただけたらと思います。大切なモノ。今しか見られないモノ。私たちだから映せたものを確かに感じていただける作品です。是非、観てください。

大塚菜々穂 コメント

この映画が完成してすぐ、世界は今まで通りではなくなり、当たり前にできていたことが出来なくなりました。でも明日はやってくるし、生きていかなければいけない。じゃあ“私”はどう生きていくのかそんな事を考えさせられる作品です。いつかはなくなってしまう景色や言葉、人が映っています。瀬浪歌央初長編監督作品「雨の方舟」をどうぞよろしくお願いいたします。

応援コメント

井浦新(俳優)

かつて人を乗せ走っていたバスは廃車になり、農作業をしなくなった畑や田んぼは雑草が生え野原へと、人の住まなくなった家は朽ちゆき、勢いの盛んだった人もいつかは衰え居なくなってゆく。諸行無常はこの村にだけ起きていることではなく全ての理。けれど、無かったことにしたくない! そんな祈りのような瀬浪監督の情熱こそが、作品が携えている神秘性の根源のように感じました。ふたつの太陽から西陽が射し込む不思議な村に迷い込んだ塔子の記憶には、出逢った人々や経験し学んだこと、食卓を囲み食べたご飯の味がずっと在り続ける。いつかきっと誰かへ伝わり、そうやって人々の記憶の中に存在し続ける。あのふたつの太陽の内のひとつは、希望の光であってほしいと願わずにはいられない。

白石和彌(映画監督)

静かに流れる時間の中で、失われてゆく風景や人々の残像が心を掻き乱す。瀬浪監督の視線は時に残酷だが、時にとてつもなく優しい。その眼力の強さが心地よい緊張感と深い余韻を作品にもたらしている。是非、多くの人に見てもらいたい作品だ。瀬浪監督が次に何を映画として切り撮るのかも、とても気になってしまう。次も、すぐに!

風間志織(映画監督)

最近の世の中の表現ってやつが均質化して妙にマジメで堅苦しくなっているなと感じる。其処へ行くと瀬浪歌央監督の「雨の方舟」はイマドキかなりヘンテコな映画だ。社会から忘れ去られたような日本の山村に暮らす若者達のところに転がり込んだ家出少女。しかし彼女や彼らについての説明は一切無い。瀬浪は、今時ならば新興宗教的疑似家族ホラーになり得る物語りを敢えて拒否し、ひたすら懐かしいと惑わされるような古き良きニッポンの壊れた山村に現代の若者達をただそこに揺蕩うように存在させる。狂言回しでもある家出少女役を演じる大塚菜々穂の眼差しが、この映画のヘンテコさをより強靱にする。彼女の視線はまるで3歳児のそれのようにひたすら真っ直ぐで、猜疑心や反発、好奇心を内包し、こちらを見つめ返す。もはや言葉は虚しい。彼女の異様に真っ直ぐな眼差しはどこへ向かうのか? きっとその方向は監督と共有しているのだろう。坦々として過激。この映画の堂々としたヘンテコさは、瀬浪がこれからも映画を撮ってゆく表現者としての重要な武器となるだろう。彼女の次回作がどこへ向かうのか楽しみにしている。

金子雅和(映画監督)

植林された自然の中、若者たちは常に不安を抱えているように見える。それは大いなる生態系から切り離されてしまった現代人の、無意識の哀しみを表しているのかも知れない。目に見えぬ「言霊」を描こうと、僅かな月の光を頼りに暗闇の中へ手を伸ばすような本作のリリシズムは、水面を漂う女性のイメージと重なり、ビル・エヴァンス「アンダーカレント」を想起した。月と海、潮の満ち引き。つまりは一人の女性が、失われた内なる自然=身体性を取り戻す物語なのだ。

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. @jyd2j

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