自らの手で育てられない赤ん坊を匿名で預けられる“赤ちゃんポスト”をきっかけに出会った人々の旅路を描いた本作。預けられた赤ん坊を横流ししてマージンを稼ぐベイビー・ブローカーのサンヒョンとドンスをソン・ガンホとカン・ドンウォンが演じた。赤ちゃんポストに赤ん坊を預ける女ソヨンにイ・ジウン(IU)、サンヒョンとドンスたちを追う2人の刑事にペ・ドゥナとイ・ジュヨンが扮している。
エキュメニカル審査員賞は、カンヌ国際映画祭の独立部門の1つで、キリスト教関連の国際映画組織「SIGNIS and INTERFILM」の6人の審査員によって、コンペティション部門出品作の中から選ばれる賞。「人間の内面を豊かに描いた作品」に与えられる。日本人監督の作品としてはこれまで、濱口竜介の「ドライブ・マイ・カー」、青山真治の「EUREKA(ユリイカ)」、河瀬直美の「光」に授与されてきた。
審査員長の
この言葉を受け、是枝は「今僕が言うことは何もないと思うくらい、この映画でやりたかったことを伝えていただいたので、短く感謝の言葉を述べて終わりにしたいと思います。捨てられた赤ちゃんと捨てた母親が、子供を売ろうとする男たちと旅に出るという話ですが、映画の最後に、彼ら全員が生まれてきたことを祝福されます。これは、施設で育った子や親元を離れて育った子たちを取材する中で、自分が社会の側、大人の側としてどうしても伝えたい言葉だと思ったので、普段はやらないくらいはっきりとセリフにしました。その祝福の言葉を聞いたあと、少しだけ上を向いて生きていけるようになる、そんな物語にしたいなと思いました。最終的には、捨てられた1つの命が社会という少し大きな箱の中で見つめられて育てられていくという、そういう話にしました。なので、今回は本当にこの作品にとってふさわしい賞をいただけたと思っています。ありがとうございます」とコメントした。
一方、最優秀男優賞に選ばれたソン・ガンホは隣に着席していたカン・ドンウォン、是枝らと熱い抱擁を交わしたあと、壇上へ。目を潤ませながら「本当にありがとうございます。光栄です。偉大なる芸術家、是枝裕和監督に深く感謝申し上げます。一緒にがんばってくれたカン・ドンウォンさん、イ・ジウンさん、イ・ジュヨンさん、ペ・ドゥナさんに深く感謝し、この光栄を分かち合いたいと思います。イ・ユジン代表、そして(製作の)CJの関係者の方にも本当に感謝しています。今、2階にいると思いますが、愛する家族とともに来ました。本当に大きなプレゼントになりました。とてもうれしいですし、このトロフィーの光栄と永遠なる愛を差し上げます。多くの映画ファンにこの栄光を差し上げます」とスピーチした。
なお韓国人俳優がカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を受賞したのはこれが初めて。是枝の監督作としては、柳楽優弥が「誰も知らない」で受賞して以来となる。
「ベイビー・ブローカー」は6月24日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。
※河瀬直美の瀬は旧字体が正式表記
河添 誠 KAWAZOE Makoto @kawazoemakoto
【イベントレポート】是枝裕和の「ベイビー・ブローカー」カンヌで2冠、ソン・ガンホは男優賞 https://t.co/1umPuSi3bE