「死刑にいたる病」の方向性を決めたロケ地とは？白石和彌が美術＆編集担当と秘話語る

「死刑にいたる病」のトークイベントが5月16日に東京・本屋 B&Bで行われ、監督を務めた白石和彌、美術を手がけた今村力、編集を担った加藤ひとみ、MCのライター・SYOが登壇した。

櫛木理宇の同名小説を実写化した本作は、24人もの若者を殺した連続殺人鬼・榛村大和と、榛村から冤罪証明を依頼された大学生・筧井雅也を軸にしたサイコサスペンス。阿部サダヲが榛村、岡田健史が雅也を演じたほか岩田剛典、中山美穂がキャストに名を連ねた。

白石の2010年の長編デビュー作「ロストパラダイス・イン・トーキョー」から白石組に参加している今村と加藤。それぞれの印象を問われた白石は、今村について「美術をやりながら映画を一緒に作る人。作品の根底から一緒にアイデアを出して作品の世界観を作ってくれる。その映画的嗅覚に惚れ続けている」、加藤に対しては「脚本は理詰めでやっていくところがあるが、編集は理詰めじゃない。加藤さんの編集は『こういう画があるからこのシーンはあとにしたほうがいい』という感覚的な部分と理屈の部分をバランスよく持っていて、そこに助けられている」と話す。

トークは、榛村が若者を殺しながら優雅に暮らす自宅のロケ地に関する話題へ。うっそうとした森を裏手にし、近くに水門がある榛村の自宅は、白石が「ここを見つけてこの映画の方向性がほぼ決まった」と語るほど重要なロケーションだった。榛村が水路に花びらのようなものを散らす冒頭のアイデアも現場で生まれたものだそう。今村も「ドキドキした。いい映画を観てるぞという気になった。それぐらいロケ地として完璧」と高く評価する。

榛村が若者たちを監禁・拷問する燻製小屋には、今村のこだわりが多数込められた。惨劇を際立たせるために、小屋の脇には白い百合を植えたことや、拷問に使われるフックを鉄工所に特注で作ってもらったエピソードなどを披露。白石は「今村さんは（部屋の）真ん中に柱を置いたり、狭かったりと、どうやって撮影したらいいの？ってなるものを作ってくれる」と語り、燻製小屋もカメラマン1人が入るのがやっとの狭さだったと撮影時の苦労を笑いながら打ち明ける。さらに今村の美術に「どの方向にカメラを向けても絵になる。心強さをいつも感じている」と全幅の信頼を寄せた。

続いて加藤は、水門で何かをばらまく榛村と、亡くなった祖母を火葬場で見送る雅也の姿を切り取ったオープニングを解説。時間軸が異なるため、脚本上はシーンが分かれていた2つをあえて交互に見せた狙いを「榛村の過去の行動が現在の雅也に影響を与えているという2人の関係性を感じさせたかった」と明かした。撮影現場を見ていない加藤は、編集用に届いた素材を見ていると、脚本上になかった演出や現場で生まれた動きに驚くこともあるそう。中でも面会室での“ある演出”に驚いたことを振り返り「現場のひらめきは面白い、映画が生き物であることを感じる」と語った。

最後に、白石は「スタッフにやりたいことをまずやってもらい、どう楽しくやってもらえるかを考えるのが自分の仕事。今日2人の話を聞きながら発見もあった。ほかのスタッフの話も聞いてみたい」と感想を述べ、トークは幕を閉じた。