辻村深月の小説を
この日撮影されたのは、新作アニメの制作発表イベントのシーン。瞳と王子がそれぞれの作品をプレゼンし、意気込みを語る場面だ。コスプレ姿の人も入り混じったエキストラ250人が続々と場内の席を埋め、実際のイベントさながらの雰囲気ができあがっていく。カメラが回ると、まずは中村が淡々と、しかし自信のにじみ出るような口ぶりでセリフを連ねる。続く吉岡は切羽詰まりギラついた表情で、新人監督の必死さを表現した。両者のプライドがぶつかり合う同シーンに際し、吉野は何度もカメラ位置を変えて丁寧に2人の表情を切り取っていく。ほかのスタッフも、エキストラに表情の作り方などの細かな指示を出し、リアリティを追求。会場には吉岡と中村が放つ「私、負けません」「勝利宣言?」「全部勝って覇権を取ります!」というセリフが幾度も響いた。
現場ではプロデューサー陣、辻村、吉岡にインタビューを実施した。本作は2015年に企画が立ち上げられ、途中で頓挫しかけながらもやっとここまで漕ぎ着けたという。プロデューサー陣は「アニメ業界の人たちを描くなら、劇中アニメを本物にしないといけない。アニメファンが観て、『これは本当に気合いが入っているね』というものにしたかった」と熱を込めて話し、努力の末現在のスタッフを集められたと語った。
辻村は脚本家・政池洋佑とのやり取りを回想し、「今回は政池さんにお願いできてすごくよかったなと思っています。送られてきた脚本には、ほとんど何も言うところがなかったんですよね」と称賛。「イベントでの会見シーンは、原作だと王子単体の会見なんです。でも瞳と合同の設定にしたことで、原作で私が伝えたかった2人の内なる闘志のやり取りがよりはっきり見られたことに感動しました。なので早い段階で『これでいいですよ』と言ったんですが、そこからもどんどんブラッシュアップされたものが送られてくるんです(笑)」と振り返った。
また辻村は、劇中アニメ「運命戦線リデルライト」「サウンドバック 奏の石」のモデル作品についても言及。「『運命戦線リデルライト』は、私が『これは革新的だ!』って感じたアニメの象徴を目指したような感じ。『少女革命ウテナ』『魔法少女まどか☆マギカ』といった自分に刺さった作品からイメージを広げました。『サウンドバック 奏の石』は、『エルドランシリーズ』の『絶対無敵ライジンオー』や、『勇者シリーズ』の『伝説の勇者ダ・ガーン』、『太陽の勇者ファイバード』といった自分が子供時代に大好きだった作品の影響を受けています。こうしたアニメを現代のクリエイターである瞳が作るとしたら?と考えていきました」と明かしてくれた。
吉岡が初めて密にアニメーターと触れ合ったのは、長井龍雪監督作「空の青さを知る人よ」に声優として参加したときだという。「アニメーションの現場では、表には出ないドラマが部署ごとにそれぞれあって、素直に題材としてすごく面白いと思いました。また、辻村さんの描かれる世界がどれも生々しく、作品を作る方たちの熱量がとても大きくて胸が熱くなります」と原作への感想を口にした。
さらに吉岡と年齢の近い女性監督・
また、吉岡は吉野について「芝居も画作りもとんでもなくこだわる方。カット数はかなり多い印象があり、微妙な差をちゃんとすくい取ってくれます。『本当にちょっとした起伏だけでいいです』と言われるので、あまり大きく演技しないようにしています」と述懐。「吉野監督と一緒だったら、心にグッとくる結末に行き着けるんじゃないかと感じています」と語った。
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