鯨岡弘識の監督作「Kay」「終点は海」公開、テーマはひ弱で揺らぐ小さな生

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「WOWOWオリジナルドラマ 文豪少年!~ジャニーズJr.で名作を読み解いた~」などで知られる鯨岡弘識の監督作「Kay」と「終点は海」が4月9日より東京・下北沢トリウッドほかで2作同時公開される。

左から「終点は海」ポスタービジュアル、「Kay」ポスタービジュアル。

左から「終点は海」ポスタービジュアル、「Kay」ポスタービジュアル。

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「Kay」

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「終点は海」

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「ひ弱で揺らぐ小さな生」をテーマとした両作の上映時間はそれぞれ23分。「Kay」では景気に翻弄され雑草のように生きた父・太一と彼の離別した娘・ケイの邂逅が描かれる。ケイを七瀬可梨、父・太一を小沢和義が演じ、母・貴子に片岡礼子が扮した。「終点は海」は、5年前に喧嘩別れし、消息を絶った息子レンが母・明子のもとに現れたことから始まる物語。明子役で洞口依子、レン役で清水尚弥がキャスティングされた。

「Kay」

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小沢は「コロナ禍の中、劇場公開に導いたスタッフの努力と情熱を称賛したく思います。僕も映像の長短を問わず、映画の力を信じて疑わない一人です。この小編映画の魅力が観客の皆様に届くことを願っています」とコメント。片岡は「喪失の物語 夏の暑い日に亡き人の荷物と娘と共演した。デビュー当時から共演をたくさんさせていただいたこともあり記憶の沢山ある小沢和義さんの姿を思いその“父”を間に七瀬可梨さん演ずる娘のKayと対峙した」と振り返り、「エネルギーのある彼女の眼差しとぶつかる面白さ。熱さ。Kayの眼差しの先をもっと観たい。現場で側に居てそんな思いに駆られました」とつづった。

「終点は海」

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また洞口は「時の止まった世界を生きた女と、止まった時間が再び動き出すことでこの映画は始まります。留めていた思い。押し殺していた感情。様々な思いを乗せて電車は走り、終点の海に辿り着く。けれど、終点は始発になるのです」と述べ、鯨岡は「2020年は『Kay』が海外映画祭で、2021年は『終点は海』が国内映画祭を中心に、多くのアワードを賜ることができました。それは、コロナ禍にこそ、これらのメッセージがシンプルに強く響いたからだと信じています。未だその状況は続くからこそ、今回の上映で多くの観客の皆様へ届くことを祈っております」と願いを込めた。

なお「Kay」と「終点は海」の先行上映イベントが3月18日に東京・100BANCHにて無料開催。現在Vimeoでは両作の予告編が公開中だ。

映画『Kay』予告編 from Raita Nakashima's Cinema on Vimeo.

映画『終点は海』予告編 from Raita Nakashima's Cinema on Vimeo.

中嶋雷太(エグゼクティブプロデューサー)コメント

小編映画「Kay」の原作・原案の拙書「春は菜の花」を発行したのが2018年夏。開発・制作を終え0号試写を開催したのが2019年12月。新型コロナ禍など想定できぬ、予定調和の明日を夢見る呑気な私がいた。そして約2年余り我慢した。この映画を観て頂く観客の皆さんの心情を考えると、こちらの理屈で劇場公開することは憚られた。2022年4月。未だ新型コロナ禍の収束は見えない。けれど、今こそ皆さんに観て頂きたいと考えた。小編映画「Kay」と「終点は海」にはカッコ良いヒーローもダーク・ヒーローもいない。心優しくも繊細でもない。説明言葉盛りだくさんの台詞もない。多くの方が囚人となり喘いでいる「良い家庭」でもない。仄かな生が揺らぎ、物語が淡々と織り成されていくだけだ。孤独や不安に押し潰されそうな日々が続くが、孤独や不安が「悪いことだ」と決めつけたくはない。押し潰されそうな自分の、そのひ弱な手をじっと見つめ、ひと呼吸ついたとき、仄かなるたいまつがきっと道を照らしだしてくれると思う。小編映画「Kay」と「終点は海」が小さく仄かでもたいまつになればと、心から願っている。

鯨岡弘識 コメント

過去を振り返ることで、はじめてその人を理解する……そういった経験をされたことはないでしょうか。「あの時こう言えていれば……理解できていれば」と後悔することは、少なからず誰にでもあるはずです。今回上映する「Kay」と「終点は海」では、主人公が初めて、近かった人の“死”と向き合うことで、心を整理する姿を描いています。しかし、それは決して紋切り型の感動的なものではなく、自分を捨てた父親や息子との邂逅なのです。そして、彼らは“悲しい”“嬉しい”などと安易に形容できるほど簡単ではない感情と向き合うことで、期せずして自らへ「生きる」という意味を突きつけます。監督として、生死を題材に取り込むことはとても難しく、悩ましいことでした。しかし、コロナ禍において、そのテーマが際立ったことも実感しました。実際、「Kay」の完成直後に訪れたコロナ禍で鏡像的に作り上げた「終点は海」は一層、題材を深めるものになりましたし、まさに、この時代に語られるべき“シンプルな力強さ”を持ったものになったと感じています。また、私自身が知らない親の世代を描くにあたり、「Kay」では小沢和義さん、片岡礼子さん、「終点は海」では洞口依子さんと話し込みました。時代に翻弄された親という難しい役を成すことができたのは、間違いなくキャスト陣のおかげです。同様に、台本を読み出演を快諾してくれた全てのキャスト陣と、深くまで感情を共有できたことが、映像にも表れていることと思います。結果として、2020年は「Kay」が海外映画祭で、2021年は「終点は海」が国内映画祭を中心に、多くのアワードを賜ることができました。それは、コロナ禍にこそ、これらのメッセージがシンプルに強く響いたからだと信じています。未だその状況は続くからこそ、今回の上映で多くの観客の皆様へ届くことを祈っております。

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(c)Raita Nakashima's Cinem

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