のんにとって「Ribbon」は、2019年に発表したYouTube Original「おちをつけなんせ」に続く長編映画監督2作目。「Ribbon」の主人公は、コロナ禍で卒業制作展が中止となってしまった美術大学に通う女性いつかだ。アーティストとしても活動するのんは、自ら主催するライブフェスの中止を決断したが、この判断に自分自身も驚き衝撃を受けたという。彼女「中止にしてしまったことに自分でもびっくりしてしまいました。ほかの仕事も全部ストップ。自粛期間も最初の頃は寝てばかり。でも、だんだんとこうしてはいられないという気持ちが湧き立ちました」と振り返る。
「エンタテインメントは不要不急なのか?」という議論も巻き起こったコロナ禍。のんは「必要必須なんだ」という思いを強く抱きながら、「コロナ禍で擦り切れた思いを、少しでもすくい上げる」という熱意で「Ribbon」を企画した。かつて美大のオープンキャンパスに参加したことがある彼女は、主人公を美大生に設定。脚本を書き進める中で大学生にも直接インタビューを行った。コロナ禍によって多くの卒業式や卒展が中止となり、学生たちの悲しみを目の当たりにしたのんは「見逃し卒展に突撃したんですが、皆さん快く引き受けてくださって。がっつり取材させていただきました」と感謝の念を明かす。
男性監督、男性スタッフが多い映画業界にあって、のんはメインスタッフの多くに女性を採用。その理由を尋ねると「女性と男性では“かわいい”や“繊細さ”の捉え方がちょっと違う。今回は“女の子”としてのいつかの感性に共感してくれる人と一緒に仕事がしたいと思っていました。シリアスな重たいテーマではあるんですけど、いつかやリボンを通して面白おかしく魅せるキュートな映画にしたかったんです」と答える。
劇中では、いつかの負の感情と密接に関わるリボンを特撮や美術によって表現。「私にとって、アートは目で見て瞬時に感じるもの。リボンは大好きなモチーフで、(映画では)リアルなのか、幻想なのか、わからないけど共存してる。ドロっとしたモヤモヤをかわいく昇華できる可能性のあるもので表現したかった」とこだわりを語った。
最後に、のんは「コロナ禍でも何か作りたいという気持ちをモヤモヤとくすぶらせて、どうにもできない女の子たちを描いてます。そういうモヤモヤ、自分の行き場のない感情を、この作品に込めました」と述懐。「いつかも何かを作ることで前に進んでいきます。いつかの姿に笑って、皆さんの心にグサッと刺さった何かを取り除けるような映画になっていたらいいなと思います」と自身と重なるキャラクターに思いを巡らせた。
関連記事
のんの映画作品
リンク
Atsushi Fukuda @fukudadesuga
心に刺さった何かを取り除く、のんが初の劇場映画監督作「Ribbon」に込めた思い https://t.co/Fi2V4hToZ9