90年代日本映画を大回顧「躍動する個の時代」、国立映画アーカイブで計66本上映

特集上映「1990年代日本映画──躍動する個の時代」が2月1日から3月6日、4月5日から5月1日にかけて東京・国立映画アーカイブで開催される。

これは2021年の企画上映「1980年代日本映画──試行と新生」に続き、年代別で日本映画を回顧する特集。1990年代を代表するヒット作や新しい才能による重要作などを中心に、57プログラム、計66本が上映される。

国立映画アーカイブは1990年代の日本映画を「ハリウッド大作の勢いに押されて興行では苦戦しながらも、ビデオ市場の広がりや自主制作の隆盛、海外映画祭での評価などの後押しを受けて盛んな創作活動が続き、才能ある個人が娯楽映画から芸術性の高い映画、アニメーションやドキュメンタリー、実験映画まで、映画のさまざまな領域で頭角を現しました」と回顧。さらに「映画の内容も多様化し、家族や地域共同体、国、性別といった既存の境界を超えるような題材が採り上げられ、個と個のつながりが模索されました。個人の感覚に根差したこうした映画作りは、現在の多くの日本映画にも継承されていると言えるでしょう」と分析している。

1990年代の日本映画を振り返る特集として「当館のみならず、国内外を通して前例のない試み」と明言されるほど大規模な企画に。ラインナップには現在も活躍する瀬々敬久、橋口亮輔、園子温、河瀬直美、阪本順治、廣木隆一、岩井俊二、三池崇史、青山真治、矢口史靖、黒沢清、是枝裕和、塩田明彦、諏訪敦彦といった監督たちの初期作品が並んだ。のちにアメリカでリメイクされる役所広司主演の「Shall we ダンス？」、Jホラーブームの火付け役となった「リング」、連続ドラマの劇場版として邦画の歴代興行収入で第3位を記録した「踊る大捜査線 THE MOVIE」などのヒット作品も。

特集では映画に見る女性像の変遷として、主体的なヒロイン像を描いた西田尚美主演の「ひみつの花園」、働く女性たちのシスターフッドを題材としたコメディ「OL忠臣蔵」も上映。女性の同性愛描写が含まれる「エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS」や男性同性愛者を描いた「二十才の微熱」「800 TWO LAP RUNNERS」「きらきらひかる」、ゲイポルノとして撮られた「あなたがすきです、だいすきです」もラインナップに並ぶ。

長編アニメーションはスタジオジブリの「耳をすませば」「もののけ姫」、押井守の「機動警察パトレイバー2 the Movie」、今敏の「PERFECT BLUE」。長編ドキュメンタリーでは新潟水俣病の傷跡が残る阿賀野川流域に住む人々を佐藤真が捉えた「阿賀に生きる」、森達也がオウム真理教の広報担当・荒木浩を中心に教団内部を記録した「A」が上映される。ほか実験映画、東映Vシネマ、ピンク映画など多種多様な作品が選定された。全上映作品は下記の通り。

第1期が1月25日以降、第2期が3月29日以降に販売される。毎週火曜日10時より、翌週に上映される作品の前売り指定席券をチケットぴあにて購入できる。

※河瀬直美の瀬は旧字体が正式表記

1990年代日本映画──躍動する個の時代

東京都 国立映画アーカイブ
第1期 2022年2月1日（火）～3月6日（日）
第2期 2022年4月5日（火）～5月1日（日）
※月曜休館
＜料金＞
一般 520円 / 高校生、大学生、65歳以上 310円 / 小・中学生 100円 / 障害者（付添者は原則1名まで）・キャンパスメンバーズ・優待 無料
＜上映作品・プログラム＞
「ネオ チンピラ 鉄砲玉ぴゅ～」
「櫻の園」
「ワールド・アパートメント・ホラー」
「無能の人」
小口詩子／和田淳子プログラム（「おでかけ日記」「ばら科たんぽぽ」「眠る花」「閉所嗜好症」「桃色ベビーオイル」）
「ザ・中学教師」
「阿賀に生きる」
「死んでもいい」
「きらきらひかる」
「オールナイトロング」
佐野和宏／瀬々敬久プログラム（「Don't Let It Bring You Down」「End of The World」）※公開当時は成人指定作品
「僕らはみんな生きている」
「機動警察パトレイバー2 the Movie」
「二十才の微熱」
「部屋／THE ROOM」
「月はどっちに出ている」「J・MOVIE・WARS 月はどっちに出ている」
河瀬直美プログラム（「白い月」「風の記憶 渋谷にて 1995.12.26」）
「トカレフ」
「我が人生最悪の時」
「夏の庭 The Friends」
大木裕之プログラム（「あなたがすきです、だいすきです」「エクスタシーの涙・恥淫」）※公開当時は成人指定作品
佐藤寿保／サトウトシキ プログラム（「LOVE-ZERO＝NO LIMIT」「迷い猫」）※公開当時は成人指定作品
「毎日が夏休み」
「800 TWO LAP RUNNERS」
「居酒屋ゆうれい」
「ガメラ 大怪獣空中決戦」
「Love Letter」
「エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS」
「耳をすませば」
「新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争」
「人でなしの恋」
「冬の河童」
「Shall we ダンス？」
「おかえり」
「シャブ極道」※公開当時は成人指定作品
「Helpless」
「ひみつの花園」
「鬼火」
「東京夜曲」
「もののけ姫」
「OL忠臣蔵」
「CURE／キュア」
「HANA-BI」
「リング」
「ユキエ」
「PERFECT BLUE」
「鬼畜大宴会」※公開当時は成人指定作品
「A」
「踊る大捜査線 THE MOVIE」
「avec mon mari／アベックモンマリ」
「ワンダフルライフ」
「洗濯機は俺にまかせろ」
「尾崎翠を探して・第七官界彷徨」
「月光の囁き」
「M／OTHER」
「アイ・ラヴ・ユー」
「日曜日は終わらない」