日本の映画・ドラマの第一線で活躍する5人の俳優たちが、同条件の予算や撮影日数で25分以内のショートフィルムを監督する「アクターズ・ショート・フィルム」。映画ナタリーでは永山瑛太の「ありがとう」、玉城ティナの「物語」、青柳翔「いくえにも。」に続いて、千葉組の現場の模様をお届けする。「あんた」は千葉がキャンプに訪れた男女の孤独の先にある関係を見つめた物語。スナックの雇われママの男が思いを馳せるのは、キャンプを楽しむ女と男の姿だ。友人と呼ぶには軽すぎて、恋人でもなく、家族にはなれない2人。一生続くはずだった関係は、男の一言によって徐々にゆがみが生じていく。
撮影は10月下旬、木々の間から富士山を望む山梨の高台にあるキャンプ場で行われた。前日の雨模様と打って変わって、この日は雲ひとつない青空。千葉と伊藤が演じる男女が、キャンプ用具を詰め込んだワゴンを引きながら坂道を登っていくカットの撮影から始まった。共演経験もあり、親交のある2人は現場でも笑顔が絶えない様子。カメラが回り本番が始まってからも、セリフは脚本通りだが、キャンプの準備を進める2人のおしゃべりや空気感は本番直前と何ひとつ変わらない。
千葉が意識したのは、2人がかもす「生っぽい」雰囲気だ。千葉と伊藤のアドリブは脚本に書かれたセリフとシームレスにつながる。カットの合間には2人が一緒に1つの台本でセリフを確認し合う場面や、伊藤が千葉より先に「OK」と言って現場を和ませる場面も。千葉は「自分であって、どこか自分じゃない。不思議な感じ」と現場での実感を述べつつ「そういった意味で切り替えはないです。待ち時間や監督として動いているとき、そしてカメラの前に立ってるときの差はなかったですね」と語っている。
「アクターズ・ショート・フィルム」の企画において、監督が主演を兼任するのは千葉が初めて。この挑戦の理由を、千葉は「当初は自分が演じるなんて考えてなかったです。ただ、脚本を書いているうちに、純粋にこの役やってみたいなという思いは生まれてはいました。そんな中、周りの大人たちの『千葉さんやるよね?』の一声が背中を押してくれて……結果僕だけ、出たがりみたいになっちゃいましたけど(笑)」と明かす。特に現場では監督としてカメラが回るまでの段取りを組み立て、俳優として本番を演じ、監督としてカットを掛けるなど、多くの切り替えが必要となる。千葉は「想像以上に大変で頭の中が混乱しちゃいました。でも脚本・監督・主演と作品の全部に携わって、腹を括れたのはよかったと思います。覚悟をもって、全部やりました」と胸を張った。
伊藤は撮影を振り返り「和気あいあいとした和やかなシーンから一転してシリアスになったり。感情の切り替えが難しかったですが、自然にできたらいいなと思ってました。友達同士でごはんを食べたり、お酒を飲んだりして楽しい時間を過ごしていても、いきなり真剣な話になるときってあるじゃないですか。その雰囲気をリアルに表現したいなと意識していました」と述懐。また千葉の監督としての手腕を「役者をとても信頼してくれて、すごく自由に演じさせてもらった気がします。こちらも監督に信じてもらっているとわかると、心を開いて自然体で演技しやすかったです。現場作りという面でとても優れた監督だと思います」と評価した。
「アクターズ・ショート・フィルム2」はWOWOWで2月6日17時より放送・配信。また「完全密着!俳優が監督になる瞬間 アクターズ・ショート・フィルム2を紐解く」が2月5日、「アクターズ・ショート・フィルム2 ドキュメンタリー」が3月6日に放送・配信を控えている。
アクターズ・ショート・フィルム2
WOWOWプライム、WOWOW 4K、WOWOWオンデマンド 2022年2月6日(日)17:00~放送・配信
※動画は現在非公開です。
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pfpf @chairo0110
千葉くん監督脚本の『あんた』は衝撃だった
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