日本の映画・ドラマの第一線で活躍する5人の俳優たちが、同条件の予算や撮影日数で25分以内のショートフィルムを監督する「アクターズ・ショート・フィルム」。映画ナタリーでは永山瑛太の監督作「ありがとう」に続いて、玉城組の現場の模様をお届けする。玉城自ら脚本を執筆した「物語」は、真っ白い部屋で同じ時を過ごす男女の物語。物言わぬ少年がただベッドに横たわる殺風景な部屋で、少女は自分の装わない気持ちを問わず語りに吐き出していく。
映画は10月半ば、東京・新橋駅を目の前にした交差点でクランクイン。少女が都会の雑踏で1人音楽を聴きながら歩くファーストカットの撮影から始まった。玉城自ら琉花の顔をのぞき込み「全体的にもう少しシャドー」「口紅に赤みを」「パール感足して」とメイクを具体的に指示していく。周囲は朝の通勤ラッシュ。街中での撮影隊は少し目立つものの、撮影を気に留める者はほとんどいない。カメラは横断歩道の向こう、さらに数十m先で待機する琉花を望遠で捉える。信号が青に変わり何十人もの人々がぞろぞろと歩き出してから、琉花とすれ違うタイミングを見計らって本番。少女は人波をすり抜けるように歩き、周囲のノイズを遮るようにイヤフォンを耳に着け、ハミングを始める。ファーストカットは1発OK。そして汐留近辺で少女が「愛の喜びは」を小さくハミングしながら、人気のないほうに向かう様子が計3カット撮影された。
移動と昼食休憩を挟み、午後からは真っ白い部屋の撮影へ。ロケ地は神奈川県のとあるデザイナーズマンション。劇中では白壁が作り込んであるものの、本来は廊下から室内が丸見えのガラス張りの物件だ。映画は冒頭をのぞき、ほぼこの部屋だけが舞台のワンシチュエーション。奥平は部屋の印象を「初めて足を踏み入れたのになぜか落ち着く特別な雰囲気がありました」と明かす。琉花は10行以上の問わず語りが何回もある一方、奥平のセリフは一切なし。普段は役者として活動する少女は少年を「裕也」と呼び、独り言のように近況や仕事の愚痴、好きな人のことをしゃべりながら、深い内省を続けていく。一連のシーンを「しゃべってる顔のアップで始めたい」と撮影の
琉花は今回が本格的な女優業初挑戦となるが、問わず語りで膨大なセリフ量をこなす必要もある。現場では少し緊張気味の琉花に、玉城が「今のテンションは何パー(%)くらい?」と尋ねる場面も。琉花が少し悩みながら「70パーくらい……?」と答えると、玉城は「意外と高かった」と笑みをこぼす。撮影を終えた玉城は「とても真剣に里奈という役に向き合っていただけて、現場で不安な要素はなかったです。琉花さんの持つ、素直さと真面目さが現場を作ってくださいましたし、すぐに経験値に変えていく力を感じました。里奈を演じていただけて本当によかった」と称賛の言葉を送り、琉花も「撮影の前に監督が何度か動きや台詞の部分を確認する時間を設けてくださったので安心して撮影に臨むことができました」と語る。
一方の玉城は初監督のプレッシャーを感じさせず、プロデューサーも驚く落ち着きよう。普段から緊張しないタイプという玉城に、その理由を尋ねると「みんなが助けてくれると思ってるから、あんまり緊張しないのかも」と余裕綽々。「現場では自分の直感に判断を委ねるところもあって、そこまで悩むことはなかったです。初監督でしたがあまり気負いはせず、現場で感じたことはしっかり共有していこうと心掛けました。撮影時間にも限りがあったので、そうしないと流れのままやってしまう気がしたんです。些細なことでも違和感や思ったことは都度、具体的に皆さんに伝えるようにしていました」と監督としての意識を明かす。
そして「物語」の完成を迎え「ちゃんと楽しむこともできたと思います。本番前の『よーい、はい!』の掛け声も最初は照れましたが、2回目からは全力で行きました!」と充実した初監督の現場を振り返る。また視聴者に向けて「あまり身構えずに作品を観ていただきたい」と求めつつ、「自分と重なる部分や台詞の中で心に残るものが何か1つでもあったらうれしいです」と語った。
「アクターズ・ショート・フィルム2」はWOWOWで2月6日17時より放送・配信スタート。「物語」は現在、ティザー映像がYouTubeで公開中だ。
※動画は現在非公開です。
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映画ナタリー @eiga_natalie
【制作現場レポート】玉城ティナが直感に委ねた初監督作「物語」の現場密着、プロデューサーも驚く落ち着き(動画あり)
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