新海誠が語る今作るべき映画とは?最新作は扉を開くのではなく“閉じていく物語”

5

869

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 199 663
  • 7 シェア

新作長編アニメ「すずめの戸締まり」の製作発表記者会見が本日12月15日に東京・帝国ホテルで行われ、原作・脚本・監督を担う新海誠が出席した。

「すずめの戸締まり」製作発表記者会見の様子。左から森七菜、新海誠、上白石萌音。

「すずめの戸締まり」製作発表記者会見の様子。左から森七菜、新海誠、上白石萌音。

大きなサイズで見る(全7件)

「すずめの戸締まり」ポスタービジュアル

「すずめの戸締まり」ポスタービジュアル[拡大]

本作は日本各地の廃墟を舞台に、災いのもとになる“扉”を閉めていく少女・鈴芽(すずめ)の解放と成長を描くロードムービー。主人公は九州の静かな町で暮らしながら、山中の廃墟にて崩壊から取り残されたように佇む古ぼけた扉を見つける17歳のすずめだ。その頃、日本各地の廃墟では向こう側から災いが訪れるという扉が開き始める。開いた扉は閉めなければいけないという不思議な扉に導かれたすずめの“戸締まりの旅”が描かれる。

新海誠

新海誠[拡大]

新海は「まだお話できないことが多い」と切り出しつつ、会見では3つの観点から「すずめの戸締まり」の内容を紹介。まず最初に「日本列島の各地を巡るロードムービーであること」を強調し、「君の名は。」や「天気の子」のプロモーションで全国各地を回ったときのことを振り返る。実際の土地を舞台にすることが多い新海は「次は私の街を舞台にしてください」と話しかけられることが多かったそう。「うれしいけれど全部は出せないと思っていました。今回はロードムービー。ちょっと欲張って日本各地のさまざまな風景や魅力的な人々、その特別な出会いを描けるんじゃないかと考えました。日本全国を広く舞台にした冒険物語です」と語る。

2つ目のキーワードとして「扉を開いていく物語ではなく、扉を閉じていく物語を作りたかった」と話す新海。脚本を開発したのは、コロナ禍と重なる2020年4月から8月にかけて。映画が生まれる起点にあったのは「扉を閉じていく」発想だったそう。地元の長野や舞台挨拶で地方に行った際を振り返り「少し寂しい風景が増えたと実感することが多くなった。人が減って、その分、緑や獣が増えて、それはどこかすごみのある風景。ただかつて人がたくさん歩いていた風景がだんだんと寂しくなっている。それはコロナ禍での新宿でも感じました」と述懐。「人は新しい土地を開いたり、家を作ったりするときに地鎮祭を行ないます。土地の神様に許しを受けて安心を願う。でも人が消えていくときは何をするんだろう?と考えました。実は地鎮祭の反対になるようなことはあまりしない。風景が寂しくなっていくのであれば、どのようにこの風景を“閉じていけばいいのか”と興味が向きました」と続けた。

さらに「どんなことでも何かを始めるより、“終わらせること”のほうが難しい。映画作りもそうですし、多くの仕事もそう。あるいは恋愛や家族関係も」と述べながら、日本社会の現状にも触れていく。「もしかしたら、少子高齢化が進むこの国にとってはいろんな出来事を始めるより、閉じていくことのほうが難しいのではと感じてます。今作るべきは、そしてお客さんが観たいのは、いろんな可能性を開いていく物語ではなくて、1つひとつの散らかってしまった可能性をもう一度きちんと見つめて、あるべき手段できちんと閉じていく物語だと考えました。閉じていくことによって次に進むべき新しい場所を見つける物語になると思います」と、作品の根底にある思いも明かした。

最後に挙げたのは「映画館に足を運ぶ理由になるような作品作りをしたい」という思い。映画館の魅力を「人間が持っている特別な能力を発揮させてくれる場所」と話しつつ「例えば感情移入すること、物語に没入すること。家でリラックスしながら映画を観ていてもできるんですが、実際に映画館に足を運んで暗闇の中の大きなスクリーンに集中すると、もっと強く引き出される。そういうことができるような画作り、音作りをしていきたい」と語る。新たにチャレンジした点としては「アクションムービーであること」を挙げた。「きっと皆さんがイメージするようなアクションスターが活躍するものとは少し違う。想像しなかったようなアクションが盛りだくさんの作品です。難しいなと思いながら作っています」と制作の苦労もにじませた。

左から森七菜、新海誠、上白石萌音。

左から森七菜、新海誠、上白石萌音。[拡大]

会見には「君の名は。」の上白石萌音、「天気の子」の森七菜が“ゲストヒロイン”として応援に駆け付けた。すでに物語は完成している「すずめの戸締まり」のビデオコンテを視聴したという2人。上白石は「新海さんの声が吹き込まれていて、色も付いていない鉛筆の画がコマ送りで動くような状態。でも一瞬で、めちゃくちゃ面白くて圧倒されました。これまでの“新海イズム”も感じつつ、新たな扉を開けられていてゾクゾクしました」と感想を述べ、森も「自分でもわからないような鳥肌が立つ感覚。いい意味で気持ち悪くて、自分の気持ちが勝手に動かされていきました」と続けた。

鹿児島出身の上白石と、大分出身の森と同じ、九州出身となっているヒロインのすずめ。森がこの設定を知って「私たちのこと好きなんだなと思いました」と冗談交じりに笑うと、新海は 「正直、最初に脚本を書いてるときは、方言も含め直近でご一緒した七菜ちゃんの声が聞こえていました。旅を続けるに従ってだんだん萌音ちゃんの声も混じってきて」と打ち明ける。前2作では上白石と森の声を聞きながら徐々にヒロイン像の輪郭をつかんでいったという新海は「まだ(すずめ役の)オーディションもやってないので、すずめが全然わからないんですが、いざ声を聞くと“わかる瞬間”がある。この人だと思う。『君の名は。』も『天気の子』も2人の声に教えられました」と感謝を伝えた。

「すずめの戸締まり」は2022年秋に全国ロードショー。

この記事の画像(全7件)

(c)2022 「すずめの戸締まり」製作委員会

読者の反応

  • 5

geek@akibablog @akibablog

新海誠が語る今作るべき映画とは?最新作は扉を開くのではなく“閉じていく物語”(イベントレポート) - 映画ナタリー
https://t.co/u9PWq4unuQ

コメントを読む(5件)

関連商品

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの映画ナタリー編集部が作成・配信しています。 すずめの戸締まり / 新海誠 / 上白石萌音 / 森七菜 の最新情報はリンク先をご覧ください。

映画ナタリーでは映画やドラマに関する最新ニュースを毎日配信!舞台挨拶レポートや動員ランキング、特集上映、海外の話題など幅広い情報をお届けします。