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本作はトランスジェンダーとして葛藤する真也と恋人ユイの10年間の軌跡を描いたラブストーリー。自身の性と向き合い自分らしく生きる真也に坂東、真也を支えていくことを選択するユイに片山が扮した。
この映画が生まれた経緯を問われた飯塚は「私が20台半ばに差しかかった頃に脚本を書き始めました。当時は結婚、出産といった人生の節目にあたるような状況の方が周りに多くて。そうなったときに、僕自身がトランスジェンダーで、パートナーと結婚できない、子供ができないっていう問題に直面して。そのときに2人が一生添い遂げるとか、幸せになるのは可能なのかっていうことをすごく考えまして、こういった映画が完成しました」と述べる。
役作りについて、片山は「お芝居というよりは、真也やユイのことをちゃんと理解しないといけないというのがまずあって。ユイや真也と同じ境遇のカップルにお会いして話を聞いたりもしました」と明かす。一方、坂東は「正直、すごく難しい役だなと。頭でわかっていても追いつけない部分があるので。監督からは最初に『勉強するのも大事なんだけど、どういう気持ちなのかを体験してほしい』という話をされました。だから実際にブラジャーを着けてTシャツを着て外に出てみたり、電車に乗ってみたりして、どう感じたかっていう作業をクランクイン前にさせていただいて。やっぱりすごくソワソワするし、どういう目で見られるか気になって、キョロキョロしたり隠しがちになってしまったり、すごくリアルな体感ができた。それは真也を演じるうえで欠かせなかったです」と語った。
難しかったシーンを尋ねられると、片山は「私は(役を)自分の気持ちで理解しないと、セリフがまったく頭に入ってこないんですよね。ユイが真也のお母さんに怒るシーンがあるんですけど『恋人の母親にこんなに怒鳴るのは人としてどうなんだろう』っていうのが、脚本を読んだときからずっとあって。何回読み返してもセリフを覚えられなかったし、撮ってるときにもどうしてもセリフが出てこないということがあって、5、6回撮り直して、監督に『2人はもっと話し合うべきで、怒鳴るべきではない』と相談もしました。そうしたら監督が『真也とユイの一番近くにいる存在で、一番理解してくれてると思ってたお母さんが、実は全然理解してないってことに対して怒ってください』と言われて、すごく腑に落ちて、セリフが言えるようになったんです」とエピソードを披露。これを受けて飯塚は「一番大きくユイの感情が爆発するシーンなので、腹に落とし込んでやってくれて、いいシーンになりました」と話した。
また、真也とユイ、そして松永拓野演じる俊平が会話する重要なシーンは話の流れのみ伝えられ、細かいセリフは本人たちに委ねられた、エチュードのような形での一発撮りだったという。これについて飯塚は「撮影を重ねていく中で、2人の中でユイと真也としての歴史ができてくれば、エチュードにしてもしゃべってほしいことをしゃべってくれるだろうと思って。僕が頭で考えたセリフというよりは、2人から自然に出てくるものに委ねたい、託したいと。すごくハードルの高いことを強いてるとは思うんですけど、結果として2人が自分の言葉で自然に語ってくれました。3分以上カメラを回しっぱなしだったんですけど、カットをかけて、横を見たら撮影監督の根岸(憲一)さんが泣いてて、僕も泣いてて(笑)。2人の中でユイと真也が生きてるんだっていう実感があって、感動的な経験でした」と語る。
このエチュードのシーンについて、坂東は「不思議な体験だったんですけど、僕の声ではなかったというか。坂東龍汰っていう存在はなくなっていました。気づいたら終わってました。あんまり覚えてないんですよ。スクリーンであのシーンを観たときはすごく感動しました」と回想。さらに坂東が「撮影が終わる前、『僕、真也になったかも』って監督に言ったことがありましたよね」と問うと、飯塚は「あったし、『お芝居をしながら、ユイとの思い出が走馬灯のように駆け巡りました』と言ってきたこともありましたね」と答えた。
最後に片山は「今、日本は夫婦別姓や同性婚を認めようっていう動きがあるので、このタイミングで公開されるのは恵まれていると思ってます。私はこの映画を通して『知ること』の大切さを改めて実感したので、たくさんの人に『こういう愛の形がある』っていうのを知っていただければうれしいと思います」とコメント。坂東は「脚本を初めて読んだとき、監督はこの作品を通して『LGBTQの人がいかにつらいか、いかに大変な思いをしてるか』を伝えたいわけではないんだろうな、と受け取ったんです。そういう状況に置かれながらも愛を探していく究極のラブストーリーなのかなと。2年半前に撮ったんですけど、最近また観直して、こういう愛の形もあっていいなと思いました。日本は世界に比べてLGBTQへの理解度が追いついてないのは事実だし、ここ数年でだいぶ変わった今、公開することに意味があると思います」と述べた。
飯塚は「障害のある2人でも、2人だけしか勝ち取れない幸せの形を勝ち取って、愛を信じるということをテーマにしてこの作品を作りました」と述懐。「これを観たお客さんが愛を信じたりとか、どんな障害があっても、その先に希望を見出してくれたらいいなと。たくさんの人に観ていただいて、誰か1人でも希望を持ってくれたらうれしいなと思います」と願いを込めた。
「フタリノセカイ」は1月14日より東京・新宿シネマカリテほか全国で順次ロードショー。
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Kasho Iizuka(飯塚花笑) @nicemoyashi
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