小坂流加による同名の恋愛小説をもとにした本作。数万人に一人という不治の病により、余命が10年であることを知った20歳の茉莉が、地元の同窓会で和人と出会ったことで物語は展開していく。生きることに執着しないよう恋をしないと決めていた茉莉を小松が演じ、和人に坂口が扮した。
桜の開花時期を見計らって撮られたのは、茉莉と和人が川沿いの道を歩く夜のシーン。2人が会話を交わす中、春の突風で花びらが舞い散り、茉莉たちが顔を見合わせて笑う場面だ。スタッフは小松と坂口の頭上で花びらの入ったかごを振り、幻想的な雰囲気を作り上げる。そして突風を表現するためブロアーで風を巻き起こすと、役に入り込んだ小松と坂口は軽やかに笑った。しかしいったんカットがかかると、真剣な表情で言葉を交わす2人の姿も見られた。
インタビューに参加した監督の
難病により2017年に死去した小坂。藤井は静岡・三島へ行き、小坂の遺族と話をしたという。「娘さんがどう生きたかというお話を何時間もしてくれたんですね。寡黙だったご親族の方がどんどん心を開いてくれて、娘さんが生きた証を僕に託したいという思いを持ってくれた。彼女がどう生きたのかをしっかり描こうと僕は自身に課しました」と述べる。
キャスティングについて質問されると、「茉莉役は小松さんがいいんじゃないかと、僕とプロデューサーチームで話しました。小松さんは僕らの意気込みを聞きに来て、彼女が本当にこの役に懸けてくれていることがわかりましたね」と回想。「小松さんは映画人というか、スタッフみんなをその気にさせる力がすごくあります」と言って、笑みをこぼした。
また「坂口くんの佇まいが好きで、僕からオーダーしました。坂口くんは和人そのままで来てくれましたし、2人にはすごく感謝しています」と述懐。「僕らはめちゃくちゃ面倒くさいスタッフで(笑)、芝居を何回も何回もやって大変なのに、2人はその空間を楽しんでくれる。ベストアクトの2人を撮れていると思います」と自信をのぞかせる一幕もあった。
プロデューサーやキャスト陣協力のもと、四季の移ろいを丹念に切り取ることが許された今作で、藤井は撮影監督とある約束をしたという。「今回は今までにない予算をいただいていますが、自主映画を撮っていたときと同じ気持ちで撮ろうと」と述べ、「自主映画だったら、はーい土日集合!みたいな感じで季節もいっぱい撮れる。今作も素晴らしい環境で1個1個を丁寧にやれています。ただそういった画だけではなく、そこに芝居や音楽、いろんなものが合わさったものを皆さん観に来ると思いますので、いっぱい仕込んでいる最中です」と期待をあおった。
「余命10年」は2022年春に公開。連続テレビ小説「ひよっこ」の岡田惠和と「恋はつづくよどこまでも」の渡邉真子が脚本、RADWIMPSが音楽を担当している。
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裏本田・柴志朗(鈴木達也) @ssurahonda
「小松さんは映画人というか、スタッフみんなをその気にさせる力がすごくあります」
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