第34回東京国際映画祭のトークシリーズ「アジア交流ラウンジ」が本日11月1日に東京・東京ミッドタウン日比谷で行われ、監督の
アジアを含む世界各国・地域を代表する映画人と、第一線で活躍する日本の映画人が語り合う同企画。第2回の本日はチャン・チェンが台湾からリモートで参加し、是枝と画面越しに語り合った。第71回カンヌ国際映画祭でチャン・チェンがコンペティション部門の審査員を務めた際、是枝の「万引き家族」がパルムドールを受賞するなど、海外映画祭で何度か顔を合わせてきた2人。パーティなどで立ち話をしたことはあっても、じっくり話すのは今回が初めてだという。
チャン・チェンはエドワード・ヤン監督作「
まずはエドワード・ヤンの現場にまつわる話題に。チャン・チェンは「古嶺街少年殺人事件」の撮影時、監督から「ずいぶんと怒られた」とか。「小さな倉のような場所で監督に怒鳴られました。演技に気持ちが入っていないと。そして反省しろと電気を消され、真っ暗な中で30分ぐらい立ち続けていると、ライトが点いて撮影現場に連れて行かれました。当時はなぜ怒られたのかわかりませんでした。でも、子供に『こうしろ』と演技を教えてもわかるものではない。リアルな反応を引き出すために怒ったんだと、今なら理解できます」と分析する。是枝は「今だと子供をそんなふうに追い込む演出は一般的には許されないですが……」と前置きし、「僕が擁護する必要もないですけど、崩れない信頼関係が2人の間にあると監督が思っていたからこそ可能だったのかなと、監督の1人としては思います」と意見を述べた。
さらに是枝は、アジア映画の巨匠たちから愛されるチャン・チェンに質問を重ねていく。「ブエノスアイレス」のウォン・カーウァイの話題になると、チャン・チェンは「アルゼンチン入りした初日、監督からCDを渡されて、音楽を聴きながら役についてのイメージを聞きました。それまでヤン監督としか仕事をしたことがなかったから、カーウァイ監督の現場は慣れませんでした」と述懐。「ヤン監督の場合は、脚本に書いてあるセリフをいっさい変えてはいけない。すべてのセリフに意味があり、なぜそう言うかは役者が自分で理解する、というやり方。カーウァイ監督は感覚を重視するタイプでした」と両監督の違いに言及する。
またホウ・シャオシェンと組んだ「百年恋歌」については、「それまでの経験をゼロに戻して再構築するという仕事だった」と明かすチャン・チェン。「シャオシェン監督の現場では、ストーリーもA4サイズの紙1枚のあらすじを理解するぐらい。『何かおしゃべりしてください』と言われたら、自分でしゃべる内容を考える。役者自身がすべてをコントロールできるんですけど、カメラをどこに置いているかも、いつ撮り始めたかもわからないままやっていくのが非常に特徴的でした」という話に、是枝は興味深そうに聞き入っていた。
是枝は、エドワード・ヤンと当時14歳だったチャン・チェンの出会いに重ね、自身も当時12歳だった柳楽優弥と出会ったことで「誰も知らない」を撮ることができたと感慨を込めて振り返る。そしてホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンの作品との出会いが自身を映画監督の道へ導いたと述べ、改めて「古嶺街少年殺人事件」について「1つひとつのささいな動きがとても繊細に捉えられている。そういう日常的な瞬間の積み重ねが繊細に描かれているところが好きです」と伝えた。
第34回東京国際映画祭は11月8日まで開催。チャン・チェンが出演した「DUNE/デューン 砂の惑星」は全国で上映中だ。
※「古嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」の古は牛偏に古が正式表記
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