舞台は過疎化が進む絶海の孤島・猪狩島。藤原が演じるのは、島の未来のために新たな特産品として黒イチジクの農園を営む泉圭太だ。行政からは地方創生の一環で5億円の支給がほぼ決まっており、島には明るい兆しが見え始めていた。しかし平穏な日常は、島に入り込んだ不審な男を誤って殺したことから一変。殺人を隠蔽しようとする3人の男たちの行く末を描く。松山が隠蔽に協力する猟師の田辺純、
前日の雨模様と打って変わって、この日は廣木が「ピーカンだな」と呟くほどの青天。肌寒い時期のはずが、一切日陰のない農園の一角に立っていると汗ばむほどの日差しの強さだった。撮影されていたのは、圭太たちが死体をある場所にいったん隠した直後、農園に捜査一課の刑事が訪れるシーン。圭太たちが殺めたのは、イチジク農園で働こうと保護司と一緒に島を訪れた仮釈放中の男だった。しかし、保護司が行方不明になったことで警察が出動。
監督はビニールハウスの中と外を縦横無尽に動き回り、俳優の動きとカメラ位置を決めていく。そして監督が求めるビジョンを聞き逃さないように近くに張り付くスタッフたち。藤原には農作業で日に焼けた具合を出すメイクが施され、神木は新人警官らしく制服姿があえて板に付いていない雰囲気に。「この写真の男性に心当たりは?」「(男の罪状は)少女の強姦殺人」と、情報を小出しにしながら3人の反応をうかがう畠山。人の動揺を誘う鋭い聴き取りに圭太は平然とした顔で対応し、純はこわばった表情を見せる。そして警察官という立場でありながら隠蔽の共犯となった真一郎の目がかすかに泳ぐ。人々の細かい挙動や表情から、今後の展開を予感させるヒリつく瞬間だ。
一連の流れから「島で死体が発見された」という知らせを電話で受ける真一郎。最初「え、死体!?」と素直に驚いた様子を見せた神木に対し、廣木は「その死体には真一郎も絡んでるかもしれない」と一言。ここで見つかるのは、仮釈放中の男ではなく保護司の死体のため真一郎たちの犯行とは直接関係ない。しかし、そのことは真一郎が電話を受けた時点では判明していない事実。人物の心理を丁寧に追う廣木は、見つかった死体が真一郎にとって自分たちがいったん隠しておいた死体かもしれないという可能性をほのめかす。この一言だけで即座に状況を理解した神木のセリフは、続くテイクで素直な驚きと少しの不安が微妙に入り混じる声色に変わっていた。現場では多くを語らない廣木が「え、死体!?」というたった一言のニュアンスに繊細なこだわりを見せた場面だった。
実は映画と原作で限界集落という点は共通しているものの、原作の舞台は島ではない。プロデューサーの北島直明に変更の理由を聞いてみると、きっかけは警察監修だったそう。現在の警察機構の捜査能力からして、殺人事件の発生・通報から素人が死体を隠蔽するのは、移動の制約がある孤島ではない限り困難という理由だった。原作からの大きな変更点となったが、島が舞台となったことで閉鎖的な集落に“ノイズが入り込む”さまがより強調されている。そしてロケ地には全国津々浦々から山と海が近く島に見えるような場所で、イチジクも栽培されている知多半島が選ばれた。撮影は南知多地域の全面協力のもとオールロケーションで行われている。
廣木はタイトルの“ノイズ”が意味することに「誰がノイズなのか。何をノイズと思うかは人それぞれ違う。誰もが誰かのノイズになり得る。そして決して悪い意味だけでなくて、いい刺激になる可能性はある」と言及。さらに“死体の隠蔽”をめぐるサスペンスであることに触れ「犯人探しの物語ではない。最初から誰が犯人かはわかっている。犯罪が起きたことで、そこから生まれた悪意が広がっていく。その広がり方、その先にあるものに興味を持ってもらわないといけない」と語る。また北島は企画の意図を「誰もが持っているはずの悪意を、みんなが少しずつ表に出すことで取り返しのつかない事態になってしまう。小さな村の人間関係が崩れ、鬱屈した感情が出てくる。それはSNSの炎上にもつながること」と明かした。
「ノイズ」は2022年1月28日より全国ロードショー。
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映画「#ノイズ」[2022/ワーナー]
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監督: 廣木隆一
出演: #藤原竜也/#松山ケンイチ/#神木隆之介/黒木華/伊藤歩/渡辺大知/鶴田真由/波岡一喜/寺島進/余貴美子/柄本明/永瀬正敏 ほか