ゆうばり映画祭が閉幕、グランプリは少女とコスプレ殺人鬼の交流描く異色作
2021年9月21日 10:09
1 映画ナタリー編集部
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021のクロージングセレモニーが9月20日に行われ、各賞の受賞作および受賞者が発表された。
9月16日から20日にかけてオンラインで開催された同映画祭。本年のグランプリには、“誰にも言えない傷を抱えて生きる少女”と、美少女アニメキャラクターのコスプレ姿で殺人を繰り返す“アニメの世界に行きたい殺人鬼”の心の交流を描いた「PARALLEL」が選ばれた。監督の田中大貴は「この作品は本当にたくさんの人の支えで制作することができました。予算の問題やコロナウイルスの問題で、今回は監督と脚本、撮影、編集、CG、美術などを1人で負担する部分が多く、次の作品を作れるのか……と思っていましたが、次回作支援金ということでお金もいただきましたので、ぜひ次の作品を作りたいと思います」と感謝を述べる。
審査員特別賞は、自由を知らず育った16歳の愛ちゃんが女装家の聖子と出会ったことで成長していく「愛ちゃん物語♡」が受賞。監督の大野キャンディス真奈は「家族について考える機会があり、そこから編成を考え脚本を書きました」「(LGBTQのキャラクターを描いたことについて)まったく気にしていなかったです。話を進めていくうちに人物が自然と出てきました」と語った。
北海道知事賞は、亀山睦実が手がけた人間とヒューマノイドの恋愛SFサスペンス「12ヶ月のカイ」に。今回新設された新鋭監督を支援するフィルミネーション賞の第1回には「PARALLEL」が選ばれ、道内外の映画業界関係者によって選出されるシネガーアワードの受賞作品は大久保健也監督作「令和対俺」に決定した。
審査員長を務めた映画監督の矢崎仁司は「全体の印象としては、皆さんアイデアはすごく面白いけれども、それを映画にするときに、ストーリーに走って、物語を語る映画が多いと感じました。もちろんストーリーも大切ですが、映画の命は俳優のまなざしとか息遣いとか、ワンカットの光景みたいなものだと思っています。だから、もっと画で見せてほしい、映像の可能性を追及してほしい、もっともっと自分自身の映像言語を探してほしいと思いました」とアドバイス。「この映画祭で映し取られた役者さんたちのことは忘れられないですし、出会えた映画たちや映画を作った皆さん、本当にありがとうございました。私も皆さんに負けないようにさっそく明日から新作の準備を始めたいです。映画への愛とエネルギーを感じた映画祭でした」と総評した。
続いて京楽ピクチャーズ. プレゼンツ インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門では、チョ・チャングン監督作「おそとはキケン」がグランプリを獲得。審査員長の映画監督・小中和哉は「コロナ禍で家から出られないという設定ですが、主人公が数年前から引きこもりで家から出ていないというキャラクターがとても面白かったです。コロナ禍で人と会えず引きこもりながらも、外へ出なければ……というメッセージを感じるとともに、ある意味映画で空想の世界を作り上げて満足している僕ら映画人への共感メッセージ、そこから出なきゃいけないのかな、という思いも感じる作品でした」と評価した。優秀芸術賞にはジョセフ・カテ監督作「Ad Lib」、長谷川千紗監督作「くっつき村」、恵水流生監督作「THE BELL」の3作品が輝いた。
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021 Powered by Hulu 受賞結果
ファンタスティック・ゆうばり・コンペティション部門
グランプリ
「PARALLEL」(監督:田中大貴)
審査員特別賞
「愛ちゃん物語♡」(監督:大野キャンディス真奈)
北海道知事賞
「12ヶ月のカイ」(監督:亀山睦実)
フィルミネーション賞
「PARALLEL」(監督:田中大貴)
シネガーアワード
「令和対俺」(監督:大久保健也)
京楽ピクチャーズ. プレゼンツ インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門
グランプリ
「おそとはキケン」(監督:チョ・チャングン)
優秀芸術賞
「Ad Lib」(監督:ジョセフ・カテ)
「くっつき村」(監督:長谷川千紗)
「THE BELL」(監督:恵水流生)
映画ナタリー @eiga_natalie
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