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イベントは、SNSに寄せられた一般客からの質問を進行の門間雄介が投げかける形で始まった。「ドライブ・マイ・カー」が収録されている短編集「女のいない男たち」を読み込んだという濱口は、ほかに参考にした作品があるかと問われると「同短編集に入っている『シェエラザード』や『木野』といった話も参考にしました」と回答。「村上春樹さんの長編は全部読んでいるので、そのとき受け取ったもの、自分の中に蓄積されていたものは反映されていると思います。『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は村上春樹さんの小説のエッセンスが詰まった作品だと思っていて、今回もすごく意識をしていました。結果、家福がいろんな人に会って最終的にたどり着く場所がある、という“巡礼”にも似た形ができあがったのかなと思います」と続ける。
原作があるものを映画化する際、変更や脚色はどの程度まで許されると考えるかという問いについて、濱口は「原作から受け取ったものや原作の核だと思っている部分には絶対に沿わなくちゃいけないし、反対にその核の部分に沿っていれば変えていいと思っています。ただ、大前提として原作者の許諾の範囲で」と述懐。「今回の場合は、映画化のお願いをするときに方向性を提示したうえで、ここから変えるかもしれないということも含めて許諾をいただきました。その分、信頼をしていただいたからには踏み外してはいけないと思っていました」と語った。
映画における嘘と本当の違いは?という質問には「それがわかりたくて演技を取り扱っている部分はあります」とコメント。「その役として過ごした時間が役者さん自身の記憶になり、役者さん自身の人間性と役の人間性が一致して、間違いなくその人自身であるように見える瞬間があるのです。それぞれの登場人物に合わせたリハーサルを前もってしておくことで、撮影が始まった初日からそれが起こり得る。そういった“嘘と本当の境界線がなくなる瞬間”の準備をしています。結果的に、現場で僕自身もそういった瞬間を目にして驚くことが多く、役者さんたちが本当に素晴らしかったと感じています」とキャストを称賛した。
最後に門間が「何度観ても発見がある作品。原作を読んで、映画を観てという繰り返しの作業をしてぜひ楽しんでください」と観客へ伝えると、濱口も「原作を読んで、書いて、という往復をやっていたので、そういった楽しみ方をすることで原作に対しても、映画に対しても見え方が変わってくることがあるのではないかと思います」と同意。「それだけの厚みのある物語を村上春樹さんから与えていただいたと思っています」と村上に感謝した。
「ドライブ・マイ・カー」は全国で公開中。
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